あくまで演出であり音が小さくても性能は出せる
演出というのは人間の気分を盛り上げるために、不可欠なのかもしれません。なかでも音による演出は、かなり効果的な気がします。たとえば結婚式で、あの行進曲や安室奈美恵さんのあの曲がかかると自然と盛り上がりますよね。控え目にいえば印象操作、まぁ正直なハナシ、錯覚に過ぎませんが、その瞬間の気分の盛り上がりは、否定できない事実に違いありません。
太鼓の音というのは魂に響くようです。魂がどこにあるのかに言及するとスピリチュアルな部分もあるので今回は避けますが、振動として人間の身体に直接響くことも、また間違いないことでしょう。太鼓の音で気分が高ぶったり気持ちが引き締まったりするのは、もしかすると太古の昔、大きな動物が近づいて来る音や、天変地異などの災害など、危機から身を守るために情報のひとつとして、身体的にも精神的にも緊張感が高まるようになっているのかもしれません。
クルマの世界でも、気分が盛り上がるのは、やはり高まっていくエンジン音を耳にしたときでしょう。ターボ化されてエンジン音が小さくなったF1は興行的に行き詰まっているので、もっと大きな音が出るようにレギュレーションを変更するようですが、どうなることでしょうか? 市販車では、ほとんどのハイパフォーマンスエンジンがターボ化されているので、もはや高回転まできっちりと回るNAエンジンの快音を聞くことはできません。
ただ主要国で実施されている車外騒音規制の影響もあり、エンジンの排気音は抑えなければならないので、もし今NAの高回転型エンジンを登場させたとしても、かつてのような音にすることはできません。そんな状況もあって、エンジン音を作って出すシステムが普及していますね。
エンジンの回転数やスロットル開度などのデータによって、もとめられる音をデジタルで生成し、オーディオ用のスピーカーから出すわけです。それで気分が盛り上がるかどうかは個人の価値観だとは思いますが、それでも、たとえばBOSEのアクティブエンジンサウンドを採用するマツダ・アテンザのディーゼルでは、エンジンの回転フィールが滑らかになったような感触が得られます。
しかしスーパーカーはまた別格です。爆音モードでは、あえて車外に音を聞かせてアピールする仕掛けになっています。マフラーをバイパスしたり、あえて排気系に燃料を入れて破裂音を出すモデルもあります。スロットルオフでパンパンと音が出たりしますが、現代の制御技術であれば、あれを完全に押さえ込むことは不可能ではありません。つまり意図的に残しているんですね。
スーパーカーというのは、いわば特別感や違和感にタイヤを付けて走っているようなものですから、当然目立ってナンボの世界なのです。だから爆音モードも当然、不可欠なものになるでしょう。それはおそらく、スーパーカーがフルEVになったとしても、ね。