ひと時代前とはSUVの性格も性能も大きく変わっている
開催中の東京モーターショーでも各メーカーがコンセプトカー、市販予定車を含めSUV(スポーツ・ユーテリティー・ビークル)が多数出展していることからもわかるように、現在世界的に人気カテゴリーとなっているSUVの好調はまだまだ続きそうだ。
このSUV人気、ふと「なぜこんなSUVが人気なんだろう?」と感じることもあるが、よく考えると人気になる理由も多数浮かび、今回はその理由を挙げてみよう。
1)悪条件下での強さ
SUVの原型はジープやトヨタランドクルーザーといったクロスカントリー4WDだったことを考えれば悪条件下での強さは当然であるが、とくに都市部を中心にクルマを使う人にはその必要性が疑問視されていた時期もあった。
しかし「ほとんど雪は降らない」と言われていた東京でもここ数年冬場は大雪が降ることが増えており、そんな時でも最低地上高が高いSUVなら(乗用車+αくらいのSUVもあるが)スタッドレスタイヤを履かせれば二輪駆動であっても大雪にも相当対応できるのは非常に有難い。
また舗装されていない道がまだ多い途上国や、スキーやキャンプに代表されるアウトドアにクルマを使う人にとってのSUVの必要性は言うまでもないだろう。
2)実用性の高さ
SUVの多くは室内に加えラゲッジスペースも広いので、荷物がたくさん詰め、かつて人気になったステーションワゴンの代わりに使えるのも大きな魅力だ。
さらにミドルクラス以上のSUVであれば、広いラゲッジスペースに三列目シートを置いた6人から8人乗りのSUVも増えつつある。三列SUVの三列目は「何とか座れる、短時間なら座れる」といった広さのものがほとんどで、ミニバンの三列目の広さには遠く及ばないが、それでも「三列目を使うことは少ないけど、三列目が欲しい」、「三列シート車が欲しいけど、ミニバンはちょっと」という人のニーズには十分対応でき、ミニバン的に使える点もSUV人気を後押ししている。
実用性といえば、SUVは着座位置が高く遠くまで見渡せるので、混雑した道でも先の様子が把握しやすくイライラしにくい、ほどほどのサイズであれば視界がいいので取り回しも意外にしやすいなど、運転が楽という美点も持つ。
またクルマによる違いも大きいが、SUVの着座位置の高さは乗り降りのしやすさにつながっていることも多く、年配層から支持を集める理由の1つになっている。
3)カッコいい
全高や最低地上高の高さを備えるSUVは見た目も頼もしく、やはり普通の乗用車よりカッコよく見える。乗用車ベースのSUVであれば普通のセダンの30万円高くらいで買え、普通の人にとってクルマは何年に一度の大きな買い物だけに、SUVを選びたくなるのもよくわかる。
またSUVのなかでもいかにも強そうなスズキジムニーやトヨタランドクルーザーといった本格SUV、昔でいうクロスカントリー4WD、レンジローバーに代表される高級SUVといったクルマたちの「必要性がなくても一度乗ってみたい」というイメージの高さも大きな魅力だ。
そしてSUVにはベンツGLCクーペ、GLEクーペ、BMW X4、X6、トヨタC-HR、来年発売される三菱エクリプスクロスといった、普通の人だと「一見では車格やカテゴリーがわからない」、流麗なスタイルを持つSUVクーペというカテゴリーも生まれ、人とは違ったクルマ、違ったSUVに乗りたい人に人気になっているのもよくわかる。
4)デメリットがなくなっている
ここまで挙げた3つのSUVの魅力、メリットはじつは昔から言われてきたことなのだが、かつてのSUVは車重が重い、重いから大きなエンジンを積むので燃費が悪い、オンロードでのハンドリングや走行安定性が乗用車に及ばないなどのデメリットが多かったのも事実だった。
しかしSUVの多くが乗用車ベースになったことでハンドリングや走行安定性は乗用車にかなり近づき、燃費もガソリンエンジンの進化に加え、ハイブリッドやクリーンディーゼルが普及してきたことで、乗用車とそれほど変わらなくなってきている。となればもともとのメリットも多かったSUVの人気も頷ける。
このようにSUVにはメリットや魅力がたくさんあり人気となっているわけだが、今後も現在のような人気が続くかはともかくとして、実用性の高さやSUVの性能を必要とする人が多くいるのも事実なだけに、SUVは今後もクルマのカテゴリーの大きな柱として堅調な需要が続くのは間違いないだろう。