発売から9年経過のルーミーと6年経過のライズが今なお売れている! それでもトヨタが喜べない事情とは

この記事をまとめると

■2016年登場のトヨタ・ルーミーと2019年登場のトヨタ・ライズはいまだ人気が高い

ルーミーはコンパクトボディにスライドドアを装着したスーパーハイトワゴンとして人気が

■ライズは人気のコンパクトSUVであり実用性も優れているために好評を博している

モデルチェンジも近そうな2台が売れ続けている裏事情

 2024年度(2023年4月から2024年3月)の小型/普通車登録台数ランキングを見ると、コンパクトカーのトヨタ・ルーミーが1カ月平均7026台を登録して上位に入った。日産セレナやトヨタ・アクアよりもルーミーが多く売られている。ルーミーの発売は2016年だから、すでに9年近くを経過するが、前年度よりも10%多く販売された。

 トヨタ・ライズの人気も高い。2024年度には1カ月平均5678台を登録して、ホンダ・ヴェゼルと同等の売れ行きだ。ライズの発売は2019年だから6年近くを経過する。なぜルーミーとライズは、設計が古いのに根強い人気があるのか。

 ルーミーが人気を高めた理由は、全高が1700mmを超えるボディにスライドドアを装着したスーパーハイトワゴンになるからだ。全長は短く、全幅も5ナンバーサイズだから運転しやすいが、天井は高く車内が広い。4名で快適に乗車できて、後席を格納すると自転車も積める。スライドドアの採用で、子どもを抱えた状態でも乗り降りしやすく、後席のチャイルドシートに座らせる作業も容易に行える。

 このようなスーパーハイトワゴンは、幼い子どもをもつ世帯を中心に、軽自動車では絶大な人気がある。代表的なホンダN-BOXは、2024年度に1カ月平均1万7564台を届け出して国内販売の1位になった。同様にスズキスペーシアも1万4041台で軽自動車の販売2位だ。軽自動車で販売3位のダイハツタントもスーパーハイトワゴンになる。

 ただしユーザーによっては、軽自動車ではなく、小型車のスーパーハイトワゴンがほしい。ルーミーはこのニーズにピッタリだ。トヨタは2024年度の国内小型/普通車新車市場で50%のシェアがあり(レクサスを含む)、販売店舗数も全国に約4400カ所だから日産やホンダの2倍以上だ。トヨタ車には、信頼性と購入のしやすさがあるため、ルーミーが人気を高めた。

 ルーミーで注意したいのは、設計の古さが散見されることだ。類似商品のスズキ・ソリオは、2024年度の1カ月平均登録台数が4374台で、ルーミーの62%に留まった。それなのに内装の質、後席の座り心地、走行安定性、乗り心地、ノーマルガソリンエンジンの動力性能、静粛性はソリオが勝っている。ルーミーを購入するときは、ソリオも試乗して商品力を客観的に判断したい。

 ライズは全長を4m以下に抑えたコンパクトSUVだ。いまはこのカテゴリーの人気が高く、ライズはフロントマスクに厚みを持たせて野性味も感じさせる。コンパクトなボディは、最小回転半径が5m以下に収まり、混雑した街なかでも運転しやすい。後席にも相応の余裕があるから4名乗車も可能だ。つまり、外観のカッコよさ、運転のしやすさ、居住性などの実用性がすべて優れている。

 さらに、ノーマルガソリンエンジンを搭載したG・2WDの価格は195万8000円だから、コンパクトカーのヤリス1.5G・2WDの197万4500円と同程度だ。カッコよくて実用的なコンパクトSUVを割安な価格で買えるため、ライズは人気を得た。

 また、トヨタの販売店によると「最近はアルファードからランドクルーザーまで、さまざまな車種が受注を停止させている。そのために販売できる車種が限られ、ルーミーやライズに力を入れるようになった」という話も聞かれる。ルーミーやライズの好調な販売は、一概に喜べないわけだ。


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渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
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13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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