この記事をまとめると
■住友ゴム工業が白河工場に水素製造装置を導入した
■水素製造装置は24時間稼働で年間最大約100トンの水素を供給する
■水素ボイラーで発生した高温・高圧の蒸気は加硫工程でも有効活用される
年間最大100トンの水素を製造
日本は2020年10月に2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指すことを宣言した。これにより自動車メーカーはEVの開発速度を早め、普及に向けてさまざまな車種をローンチしている。しかし、もちろんカーボンニュートラルは、そんな自動車メーカーの取り組みだけでは成し遂げることはできない。そのほかの多くのメーカーや企業による努力が必要となってくる。
「ダンロップ」や「ファルケン」などのブランドで乗用車のタイヤを生産・販売している住友ゴム工業も、カーボンニュートラルの実現に向けて尽力しているメーカーのひとつだ。そしてこのたび、住友ゴム工業が日本国内で稼働している工場で最大級の規模を誇る白河工場に水素製造装置を導入したことを発表した。
住友ゴム工業の白河工場画像はこちら
もともと住友ゴム工業白河工場では、水素によって発電された電力を利用してタイヤを製造する実証実験が行われており、すでに水素エネルギーと太陽光発電を使用した日本初の製造時カーボンニュートラルを達成した量産タイヤを市場に出荷している。その実証実験に使用される水素の一部を、今回の水素製造装置によって自前するということだ。
さて、住友ゴム工業白河工場に導入された水素製造装置は、山梨県が中心となって開発を進めてきた次世代型のエネルギーシステムである「やまなしモデルP2Gシステム」で、太陽光発電などの再生可能エネルギーを活用して水を電気分解することで、環境負荷の少ないグリーン水素を製造する。さらにこのシステムは、40フィートのコンテナにシステム一式がパッケージされており、この手のシステムとしては設置が非常に容易となっていることも特徴となっている。
住友ゴム工業白河工場に導入された「やまなしモデルP2Gシステム」画像はこちら
住友ゴム工業白河工場では、2025年4月よりP2Gシステムによる水素製造を開始。同システムを24時間稼働することで、年間最大約100トンの水素を製造する予定だ。そして現在、P2Gシステムで製造されたグリーン水素は、従来の配達水素、系統電力、場内太陽光発電、既存燃料とともに白河工場のエネルギー源のひとつとして活用されている。
また、水素を製造する過程に必要な水素ボイラーで発生された高温・高圧の蒸気は、タイヤ製造の最終段階である加硫工程でも有効活用されるなど、効率的なタイヤ製造を行い、脱炭素化を推進する。
住友ゴム工業の「NEO-T01」によるタイヤ製造画像はこちら
住友ゴム工業は、白河工場を「脱炭素グランドマスター工場」と位置づけ、グリーン水素を活用したタイヤ製造のノウハウを蓄積し、将来的には国内外の他工場への展開も視野に入れているという。
2050年のカーボンニュートラルの実現はそうやすやすと実現できるものでない。しかし、実現に向けた努力を、いまも多くの企業が多大なコストをかけて行っている。そのひとつひとつの積み重ねが、いずれカーボンニュートラル実現の礎となる。そんな意味でも、白河工場に水素製造装置を導入した住友ゴム工業を応援したい。