セナ・プロストにシューマッハ・ハッキネンたちの伝説のレース
今年もF1日本GPの季節がやってきた。1987年にフジテレビによるF1全戦のテレビ中継がはじまって、今年でちょうど30年。それを記念して、この30年間の名レースをピックアップしてみよう。
1)1987年イギリスグランプリ(シルバーストン)
ホンダF1第二期で、1.5リッターV6ターボエンジンが、1000馬力以上(予選ブーストで1500馬力!?)を発生し、最強エンジンといわれていた時代。このレースでは、同じウィリアムズ・FW11B・ホンダをドライブする、ネルソン・ピケとナイジェル・マンセルの一騎打ちとなった。予選2番手からスタートしたマンセルは、25周目にタイヤにバイブレーションが発生しピットイン。ノーピット作戦のピケは、この間約30秒のリードを得る。
しかし、ここからマンセルは、ファステストラップを連発し、全開バリバリ。母国のファンはこの怒涛の追い上げに大興奮し、マンセルを応援する拍手とウェーブが、時速250キロでシルバーストンを周回することに!
63周目、マンセルはストウカーブの手前でアウトからピケに仕掛け、ピケがアウトに被せてきた瞬間、インからオーバーテイク。一刀両断の見事なパスシーンは、当時、ウイリアムズ・ホンダのスポンサーだったキャノンのCMにも使われた。1位から4位は、マンセル、ピケ、セナ、中嶋で、ホンダエンジンのワンツースリーフォー・フィニッシュだった。
2)1993年ヨーロッパグランプリ(イギリス ドニントンパーク)
「雨のセナ」といわれた、アイルトン・セナのベストレースのひとつ。この年、ホンダエンジンを失い、ライバルよりワンランクパフォーマンスの低いマクラーレン・フォードをドライブするセナは、このレースでも予選は4番手。
しかし決勝は気温が低く、路面はウエット(スタート時雨は上がっていた)。このコンディションのなか、「雨のセナ」は本領発揮。オープニングラップで、シューマッハ、ヒル、プロストの3台を抜き、トップへ。途中、雨が降ったりやんだりで、何度もタイヤ交換を強いられるなか、セナは合計5回のピットインで見事優勝。プロストは7回もピットインと混迷し、シューマッハは単独スピンでリタイヤという荒れたレースを、神がかったドライビングで勝利を手にし、セナ伝説に1ページを加えたレース。
3)2000年ベルギーグランプリ(スパ・フランコルシャン)
オー・ルージュ、ブランシモンなど高速コーナーと、レ・コーム、リバージュなどの名物コーナーがある、もっとも魅力あるクラシックサーキットのひとつ、スパ・フランコルシャンが舞台。この年の主役は、永遠のライバル、ミハエル・シューマッハとミカ・ハッキネン。
ポールのハッキネンは、13周目に単独スピンでシューマッハに首位を奪われるが、ピットイン後に1周で1秒縮めるハイペースでシューマッハを猛追。40周目、オー・ルージュで迫りケメルストレートエンドで仕掛けるが、シューマッハがブロック。
そして運命の41周目。同じケメルストレートに今度は、リカルド・ゾンタのマシンに追いつく2台。ややイン側に寄ってラインを譲ったゾンタを、シューマッハはアウトからパス。しかし、ハッキネンはゾンタのイン側のわずかなスペースに飛び込み、ゾンタを挟んでシューマッハをパス! このシーンは「F1史上最高のオーバーテイク」といわれている。
4)1988年日本グランプリ(鈴鹿サーキット)
マクラーレン・ホンダのセナ・プロストの頂上決戦だった名レース。ポールポジションのセナと予選6番手の中嶋が、決勝スタートでまさかのエンジンストール。しかし、鈴鹿の下り坂になっているホームストレートに助けられて、エンジンが再始動し、中盤からの追い上げに。
コンディションは小雨のウエット。ウエットレースを得意とするセナは、前走車を次々とオーバーテイクし、28周目の1コーナー手前でついにトップのプロストをパス! そのまま逃げ切り、自身初のワールドチャンピオンを、ホンダの母国、日本で決めた一戦だった。なお、マクラーレン・ホンダは、コンストラクターズタイトルも手にして、ここ鈴鹿でダブルタイトルを獲得している。(中嶋は7位。当時の入賞は6位以上だった……)
<番外編>
日本GPといえば、映画「ラッシュ/プライドと友情」のハイライトにもなった、1976年F1世界選手権イン・ジャパンも! 富士スピードウェイで行われた、日本で初めてのF1グランプリ。日本から、長谷見昌弘、星野一義、高原敬武の3名が出場。長谷見は、国産マシン・コジマKE007で参戦し、予選では最終コーナーまでトップタイプで走りながら、サスアームが折れてクラッシュ。デビュー戦ポールポジションは幻となっ
た……。
決勝は大雨でスタートディレイ。ポイントリーダーのニキ・ラウダ(フェラーリ)は、第10戦ドイツGP(ニュルブルクリンク・オールドコース)で大やけどを負う瀕死の重症になりながら不屈の闘志で参戦。しかしあまりのコンディションの悪さに、決勝は2周でリタイヤ。ランキング2位のジェームス・ハント(マクラーレン)は、この最終戦で、ラウダが0ポイントで、自身が4位以上がチャンピオンの条件だったが、3位でチェッカーを受け、逆転チャンピオンになった。