この記事をまとめると
■ホンダアクセスは日常の速度域で体感できる「実効空力」デバイスを開発・販売している
■メディア向けに開催された「実効空力ワークショップ」に参加
■自作したシェブロンでも効果を実感することができた
「実効空力」ってホントに効果あるの?
ホンダアクセスが提唱する「実効空力」という概念を、最近よく目にするという方はそこそこいるのではないだろうか。代表的なのが、ノコギリ状の空力デバイスであるシェブロン。直近では、シビック、そしてシビックタイプR用のアフターパーツに大々的に採用されている。
実効空力を採用したシビック用テールゲートスポイラー画像はこちら
この実効空力という概念であるが、正直なところ、話を聞く限りでは半信半疑くらいだった。実際に乗り比べた経験のある編集部の面々は口を揃えて「変わったよ!」なんていっていたわけだが、それプラセボ効果ってやつなんじゃないの? なんて内心は思っていたのだ。ここだけの話。
とはいえ、まったく意味のないものかといえば、そうも思えないところではある。ギザギザを付けたくらいで20km/hや30km/hくらいの領域でそんなに走りが変わってたまるか! と思う一方で、ホンダほどのメーカーが自社で抱えるアクセサリー部門が、大して意味のないものにここまで時間とおカネを費やすか? とも考えてしまう。
実効空力の紹介ブース画像はこちら
そんな感じになんとなくモヤモヤを抱えていたボクのもとに、ホンダアクセス広報のSさんから1通の案内が舞い込んできた。なんでも、ホンダアクセスの取り組みをより深く理解してもらうべく、メディア関係者向けに「実効空力体感ワークショップ」を開催すると。ほー。実効空力デバイス装着車・非装着車の乗り比べだけでなく、自身のクルマをもち込んでその場でデバイスを付けたり外したりして乗り比べられると。ほーほー。
この絶好の機会を逃すまじと、両手を挙げて参加表明したまではよかったが、さてどうしたものだろうか。というのも、このような業界の末席を汚しておきながら、ボクはクルマの挙動や乗り心地に対してあまり敏感なほうではない。むしろ、自慢することじゃあないが相当ニブい部類だと思う。タイヤのエアを0.5気圧くらい抜かれても、なにもいわれなかったら気づかずボケッと乗っている、そういうタイプなのだ。それゆえ、行って試してなにひとつ実感できなかったらどうしよう……という一抹の不安を抱えたまま、あれよあれよという間に当日に。
まずは座学形式で、実効空力とはなんたるかを改めて学ぶ。実効空力をひとことでサクッと説明するとすれば、「日常の速度域で体験できる空力効果」。クルマにおいて空力と聞くと、どうしてもレーシングカーだとかダウンフォースだとかそういう話を連想しそうになるが、実効空力がフォーカスしているのは、街乗りをはじめとした日常的な車速域での走行である。
「実効空力体感ワークショップ」座学の時間画像はこちら
速く走らせるためにダウンフォースを作るのではなく、空力を整えることによってクルマの接地バランスを取る→タイヤとサスペンションの性能が最大限に引き出される→結果、クルマの走りがよくなる。
自分なりに平たく解釈すると、こんな感じのリクツだ。
エンジニア陣の話で印象的だったのが、「過渡領域での特性」にこだわっているということ。素人考えではあるが、過渡領域の動きを改善しても、それを定量化することはかなり難しいのではないかと思う。つまり、わかりやすく「これだけよくなりましたよ!」というのがユーザーに伝わりづらいわけで、そのような「売りにくい」であろうテーマに主眼を据えたエアロパーツをマスメーカーが作る、ということが興味深い。
さて、座学が終わるとさっそくコースへ……とはならない。工作の時間だ。今回、シェブロンを自分のクルマに取り付ける企画で使うシェブロンは自ら製作するのであった。
というワケで、切り取り線に沿ってスチレンボードを切り抜いていく。なんだか小学生に戻って図工の授業を受けているようで面映ゆい。ちなみに、この三角形のサイズ(1辺3cm)とスチレンボードの板厚(約5mm)も計算ずくで決まっているのだとか。
「実効空力体感ワークショップ」でシェブロンを自作画像はこちら
それぞれがシェブロンを作ると、コースに移動する。まずは、ホンダアクセスが用意してくれたN-BOXで、ルーフエンドのシェブロンを付け外しして走行し、その効果を試すことに。
コースは、まず複数サイズの凹凸が設置された路面を低速で通過し、パイロンで作られた円のまわりを2〜3周旋回。そこから大きめなRのコーナーに向かい、抜ければ終了といった具合だ。
まずは、シェブロンなしのN-BOXでコースインする。純然たるノーマルカーなので当たり前だが、まあ……フツーだ。ここでの感覚を忘れないうちに、すぐにシェブロンを取り付け、再度コースイン。すると、最初の凹凸路面の時点で驚きが。なんだかボディの剛性感が上がり、アシがよく動いている! ……ような気がするのだ。車速にすればわずか15km/h程度しか出していないというのに。
「シェブロン」を装着したN-BOXに試乗画像はこちら
読者の皆様は「ケッ、んなわけねえだろ、トーシロがよ。いくらゼニ包まれてチョウチン記事書いてんだ?」なんて思われるかもしれない。ボク自身だって、10km/h、15km/hくらいの車速で「空力が効いてボディの剛性感が上がった」なんて聞いたら、たぶん鼻で笑うと思う。というか、正直いまでも自分を疑っている。
プラセボ効果だといわれたらそれを否定しきる自信はないが、前述のように感じたことはウソではない。あと、この件に関してホンダアクセスさんと一銭たりとも金品の授受がないことは記しておく。念のため。
さて、コースはその後定常円旋回、コーナーへと進むが、こちらについては大きく変わった! かといわれると、正直なところボクにはあまりわからなかった。ちなみに、招かれていたほかの関係者たちは、「リヤの落ち着きが増した」「前後バランスが変化した」といった感想を口にしていた。
つづいて、先ほど作ったシェブロンをマイカーに取りつけて試すコーナーへ。まずは、モデューロの開発アドバイザーである土屋圭市さんが自らのAE86トレノ(『マメ号』の愛称をもつ超有名なアノ個体だ)のルーフ後端にシェブロンを貼りつけてコースインする。つづいて、シェブロンをルーフ前端に貼り直して、再びコースイン。
土屋圭市氏のAE86にシェブロンを貼り付ける画像はこちら
走行を終えてクルマから降りてきた土屋さんは、ルーフ後端に貼るとアンダーステア傾向、前端に貼るとオーバーステア傾向にクルマの動きが変わったとコメント。土屋さんはボクたちクルマ好きの若者にとっては神様みたいな存在なのだけれど、やっぱりシェブロンの効果に対しての疑念は正直まだ残っていて、失礼ながらそのコメントを100%信じることはできずにいた。
するとその心境を見透かしたかのように、土屋さんは「疑ってかかってください」という。それほどまでに効果に自信があるというのだろうか。
シェブロンの効果を語る土屋圭市氏画像はこちら