全長11kmもの豪快なワインディングが私道だと!? 王様が宮殿に行くために作られた道「ジェベル・ハフィート・マウンテンロード」のスケールに絶句

この記事をまとめると

■UAEには60個のコーナーを経て1200mの山を登る総距離11kmの私道がある

■「ジェベル・ハフィート・マウンテンロード」は山頂にある王さまの宮殿へとつながる

■自動車メーカーが砂漠気候での車両実験を行うテストコースとして使用している

アラブの王さまが宮殿に行くためだけに作られた私道

 私道と聞くと1車線もない幅で、たかだか数10m、行きつく先は平たい日本家屋、みたいなイメージかと。同じく自分の住み家に向かうのに、総距離11km、60個のコーナーを経て1200mの山を登る私道といったらどうでしょう。にわかには信じがたい道ですが、世界の7不思議に次ぐ8番目の謎とまでいわれているこちら、アラブの王さまが自分の宮殿に向かうためのもの。いくらなんでも、凄すぎます!

 ジェベル・ハフィート・マウンテンロードと呼ばれる私道は、産油国のなかでももっともリッチといわれるアラブ首長国連邦(UAE)とオマーンの国境にそびえるジェベルハフィート山を切りこんで作られています。標高1200メートルと、国内でもっとも高い山のひとつだそうです。ちなみに、アラビア語でジェベルは山、ハフィートは空、文字どおり空へそびえる山というネーミング。また、山岳地帯といっても年間降雨量は77mm程度、平均気温27°といいますから、クルマを走らせるには絶好のコンディションといえるでしょう。

 このルートは平均勾配が8度といいますから、そこそこきつい上りということに。ヒルクライムレースで有名なパイクスピークでも7度なので、豪快に走ろうと思ったら500馬力くらいのマシンがほしいところ。この勾配を利用して、自転車のロードレースも行われています。なお、UAEは自転車レースにも積極的で、2020年にはUAEチーム所属のポガチャル選手がジェベルハフィートでのステージ優勝を飾っています。

 そして、車線が上り2車線、下り1車線というのもクルマ好きには喜ばれるはず。遅いクルマは登坂車線を走り、その横をブンブン追い抜けるのは効率的だし、なにより気もちがいい。王さま、じつにわかってらっしゃる(笑)。建設は1980年とされ、ドイツの建設会社が請けおい、スウェーデン人のエンジニアが設計を担ったとのことですが、クルマ好きが多い両国のこと、コーナーの曲率や直線部分の長さなどちょっとしたサーキット顔負けの面白さだそうです。

 もちろん、こんな楽しげな道を自動車メーカーが放っておくわけもありません。最初はランドローバーがプロトタイプのテストに使い、次いでポルシェが実験グループを派遣、その後もさまざまなメーカーが「暑い砂漠気候」での車両実験に訪れているとのこと。ジェベル・ハフィート・マウンテンロードの先にはホテルが1軒あるので、メーカーの常宿となっていること間違いありません。

 このホテルから少し先の頂上こそ、国王シェイク・ザイード・ビン・スルタン・アル・ナヒヤーンが所有する巨大な宮殿がそびえています。私道の入口には国王の顔が描かれた大看板があるとのことですが、王さまの考えることというのはスケールといい、理由といい一般人には理解しがたいものがあるようです。

 なお、この山を下る道になると、ところどころにタイヤのブラックマークが残されているほか、道路わきには衝突の跡を消すようなペイントがいくつもあるとのこと。なるほど、国が変わっても走り屋のやることというのは、全世界共通なのかもしれません(笑)。


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