この記事をまとめると
■1970年代のマツダは幅広いモデルにロータリーエンジンを搭載していた
■1974年には北米向けに「ロータリーピックアップ」を発売
■短命に終わったものの現在はコレクターズアイテムとして人気を博している
マツダのロータリーバブルを象徴する1台
マツダのロータリーエンジンといえば、いまでこそスポーツカーに搭載されるイメージが強いものの、ひところは「なんでもかんでもロータリー積んじゃえ」てな時代がありました。発売当初こそ、コスモ・クーペで話題をかっさらいましたが、次いでカペラやルーチェ、ファミリアといった一般的なモデルにも搭載。それこそ、ロータリー無双なラインアップを誇ったものです。
やがて、これらのモデルでは飽き足らず、マツダは北米向けトラックにまでロータリーを積んじゃいました。じつは生産台数も少なく、まさにお宝ロータリーマシンの筆頭に違いありません。
マツダがロータリーエンジンを市販車に搭載したのは、ご承知のとおり1967年のコスモスポーツが最初でした。その後、既存モデルのエンジンをどんどんロータリーに積み替えるなどして、1970年代のラインアップはほぼすべてをロータリー化しています。
マツダ・コスモスポーツのフロントスタイリング画像はこちら
同じころ、マツダは北米でトヨタやダットサンの小型ピックアップが好調な売れ行きを示していることに着目。当初はフォードとの協業によるピックアップ(クーリエ)を作っていたのですが、1972年には自社ブランドの2代目プロシードとして販売することに。次いで1974年には654cc×2ローターの「13B型」ロータリーエンジンを搭載し、「REPU」(ロータリーエンジン・ピックアップの略)のニックネームを名乗ったのでした。
マツダ REPU画像はこちら
全長は4325mm、全幅も1675mmというサイズはサニトラをターゲットとしたものかと。しかしながら、2ローターの最高出力111馬力/6000rpm、最大トルク160Nm/3500rpmというパフォーマンスは圧倒的なもの。5速MTと3速ATが用意されており、実用性に注文が付くようなものではありませんでした。
また、スタイリングにはフォードの助言があったとされ、フロントグリルに三角のロータリーエンブレムが飾られたほか、フロント・リヤともにふくよかなフェンダーラインを形づくるなど、いま見てもスタイリッシュではないでしょうか。
マツダ・ロータリーピックアップのフロントマスク画像はこちら
なお、エンジンパワーの増大にあわせて、フロントブレーキがドラムからディスクへと変更されており、ちょっとしたプレミアモデルのような商品性。プレミアムといえば、リヤハッチにある「ROTARY POWER」というロゴはディーラーオプションとして設定されたもの。このあたりも、アメリカナイズされていて、当時の勢いをひしひしと感じます。
マツダ REPU画像はこちら
1974~77年の3年間という短い生産期間のなか、ロールアウトしたのは1万5000~6000台ほどといささか寂しい数字に終わっています。一説によると、ネックとなったのはREPUの高価格だったとのこと。レシプロエンジン搭載車に比べ、およそ1.5倍はしていたらしく、なるほど小型トラックのメインユーザーとなる若者たちには厳しかったのかと。
それでも、世界で唯一のロータリーエンジン搭載トラックとして、北米では人気のコレクターズアイテムとなっているとか。日本国内にもロータリーマニアが数多く輸入しており、例の甲高いエキゾーストノートを響かせている模様です。そんなことを聞くと、マツダのロータリー無双時代が再び巡ってくること、願わずにはいられませんね。