この記事をまとめると
■いまトラックドライバー不足が深刻だ
■混載便や共同輸送などで各社対策している
■コカ・コーラと湖池屋の取り組みを紹介
トラックのスペースを有効活用!
物流の2024年問題が現実化し、現場では少しずつその影響が出始めている。輸送分野で直接発生する問題は、トラックドライバーの不足だ。就業者が増えないなかで労働時間を減らすことになれば、人手不足になるのは自明の理といえよう。トラックがあっても、ドライバーがいなければ運送業務は成立しない。自動運転などといっても、運用にはいましばらくかかりそうだ。
このような背景のもと、いますぐに可能な対策がいくつか実行に移されている。そのひとつが、混載便や共同輸送だ。両者には正確な定義づけがあるわけではないので、事業者などによって若干捉え方に違いがあるようだ。しかし、概ね以下のように解釈ができるだろう。
混載便:複数の荷主の荷物を1台のトラックに乗せて運ぶこと
共同輸送(配送):複数の荷主が提携し、1台のトラックあるいは同じ運送会社を利用して荷物を運ぶこと
従来、大手メーカーなどでは自社の荷物だけを専用便、自社便などで輸送をしていた。その場合、出荷する荷物の量に合わせてトラックを手配することになる。しかし、つねに積載重重量が一杯になるといった、効率的な輸送ができるわけではない。むしろ、隙間のある非効率な状態で輸送することのほうが多いのだ。
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そこで、自社の荷物だけではなく同方面に行く他社の荷物も一緒に運ぶことで、トラックの使用台数を減らそうという考え方が生まれたのである。2024年10月から開始されたコカ・コーラボトラーズジャパン(以下コカ・コーラ)と湖池屋の共同幹線輸送も、同様の考え方に基づいている。
コカ・コーラの製品は重量物なので、荷物の積み下ろしや保管状況の効率を考えてトラックに積載するため、比較的空きスペースが発生しやすい。湖池屋の製品は軽量物なので、そういったスペースに積み込むことが容易だ。この提携は、製品同士の相性の良さも後押ししているのであろう。
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今回の共同幹線輸送は関西から九州に向けた路線が対象で、2024年8月から9月までテストが行なわれていた。その結果、トラックの使用台数を33%削減できたという。これを受けて、今回の本格的な運用に入ったのである。具体的には、
・コカ・コーラの京都府エリア工場から製品を出荷し、そのトラックが湖池屋の京都府・大阪府の倉庫に立ち寄って、搭載されている荷物の空きスペースに湖池屋の製品を積載する
・両社の製品を満載したトラックは湖池屋の福岡エリア倉庫に荷物を降ろしたあと、佐賀エリアにあるコカ・コーラの倉庫に納品をする
といった段取りになる。
コカ・コーラは、すでに伊藤園とも同様の協業を実施している。こちらは湖池屋より1カ月ほど早いスケジュールで進行しており、愛知県新城市を中心とするエリアで実証実験が行われ、2024年9月から本格的な運用に入っているのだ。具体的には、両社の物流拠点から小売店舗への配送部分を、コカ・コーラが両社製品を混載して配送するといったものである。
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いうまでもないが、両者は飲料のライバルメーカー。本来なら、物流でもしのぎを削りかねない間柄といえる。それが同じトラックで製品を運ぶというのは、交渉過程で相応の苦労があったことは想像に難くない。事業者同士の慣れ合いは消費者利益に繋がらないが、こういった前向きな提携は「2024年問題」解決の一助となり、社会に貢献すると考えられる。今後は、他業種でも広く浸透していくことだろう。