この記事をまとめると
■トランプ大統領はEVの促進策を廃止する大統領令に署名した
■爆発リスクがあるためロサンゼルスでは火災で燃えたEVの撤去に時間を要している
■最近では他人の家で勝手にEVの充電を行う「盗電行為」も問題視されている
BEVは発火するとその後も大変
アメリカ大統領のドナルド・トランプは、2025年1月20日、正式に大統領に就任。そして就任直後にはBEV(バッテリー電気自動車)の促進策を廃止する大統領令に署名した。このような流れを受け、アメリカ運輸省連邦道路管理局は、2025年2月6日にインターステート(州間高速道路)のレストエリア(日本のサービスエリアのようなもの)内などへの充電器設置について、各州に分配する助成金の承認を停止したと報じられている。
南カリフォルニアでレンタカーを運転していると、確かにインターステートのレストエリアでの充電器設置が目立っていた。荒涼とした砂漠の真ん中でもBEVの充電ができるというのを見ると、さすがアメリカとも思えたのだが、今後、充電器はいままでほどポンポンと増えていくことはなさそうだ。
駐車場に停車しているフォード製EV画像はこちら
アメリカで突出してBEVが普及しているといわれているカリフォルニア州では、2024年第3四半期時点でのZEV(ゼロエミッションビークル)の普及率は25.4%となっている。
2025年1月7日に発生したロサンゼルス地域での山火事はその範囲も広く、甚大な被害を出したのは記憶に新しいところ。その山火事では多くの住宅街が焼け野原となってしまい、その復興作業が始まったとのニュースも入ってきているが、なかなか作業が思うように進まないとのことであった。その主たる原因が焼失した住宅跡に残されたモバイルバッテリーや、駐車場に停められたまま消失したBEVの駆動用電池といったリチウムイオンバッテリーの除去に手間取っているというのである。
いままでならば、重機でがれき処理にもすぐ取りかかれたのだが、被害地域には高級住宅街も多く、そのためBEVも多く焼失しているので、そのまま重機などで片付けようとすると爆発事故が発生し、二次被害を招くというのである。そのため、専門業者のまさに手作業でリチウムイオンバッテリーを瓦礫から除去しないと、本格的な復興作業に取りかかれないという。
EVのリチウムイオンバッテリー画像はこちら
また、ネット上では、その真偽は不明なところも多いが、留守中の他人の住宅の駐車場に勝手に自分のBEVを停め、その住宅の充電施設で充電する盗電行為も多発しているという。アメリカの新興住宅地といえば、いまどきはその区画全体を壁で囲み、出入口を絞って入退場を管理する「ゲーテッド・コミュニティ」タイプが主流となっており、住民以外の不審人物の侵入リスクが低い代わりに、住民同士で「電気を少々」みたいなトラブルが発生しているのかもしれない。
過去には「ガソリン泥棒」なども頻発していたので、ZEVという新しいものが普及をはじめると、形を変えた新たな問題が表面化してきているようである。
自宅の充電設備から充電ポートに接続している様子画像はこちら
韓国では地下充電施設が絡むとされる、BEVの車両火災が一時クローズアップされていた。しばらくはICE(内燃機関)車との共存が続くことになるが、ここでいくつか紹介したような問題が、「そこまでしてBEVを普及させる意味があるのか?」などと世のなかを分断させるような、新たな議論を生むことになっていくかもしれない。