この記事をまとめると
■スーサイドドアは前ヒンジではなく後ヒンジで開くドアだ
■かつては軽自動車などにも採用されたが現在はほぼ廃れた
■リヤの後ろ開きドアについては高級ショーファーカーでは今も採用例がある
おぞましい名前を与えられた理由と消えたワケとは
クルマのフロントドアは基本的に前ヒンジで外側に開き、ドアの後ろ側でロックするようになっている。これは4ドアセダン、2ドアクーペ、スポーツカー、そしてリヤスライドドアをもつミニバンでも変わりはない。
しかし、世のなかにはフロントドアが後ヒンジとなり、前側でロックする特異な開き方をするドアがある。それを「スーサイドドア(suicide door)」と呼んでいるのだが、suicideは自殺、自殺者、自殺行為、自滅という意味だから怖すぎる。
ロールス・ロイス ドーンのスーサイドドア画像はこちら
今ではロールス・ロイスの2ドア車が採用するのみとなっているが、古くはスバル360、スバルサンバー、三菱ミニカ、フィアット500、フィアット・ムルティプラ600などの採用例がある。
採用の理由のひとつが、足もと側が大きく開くために前席に乗降する際乗り降りがしやすく、優雅な姿勢で乗り降りすることができるというメリットだ。スバル360を例に挙げれば、小さな2ドア車の後席に乗り込むときにドアの後ろに回り込まずに乗り込め、運転席から後席に移動するのもラクになるわけだ。また、クルマを止めて、運転席に乗ったままひと休みする際、足を車外に出してくつろぎやすいという理由もメリットになるかもしれない。
スバル360のスーサイドドア画像はこちら
が、現在、スーサイドドアを採用しているのは、すでに説明したようにロールス・ロイスぐらいのもの。もはや廃れたフロントドア形状といっていい。
たしかに、前席の乗降性という点ではメリットもありそうなドアだが、廃れてしまった理由として、「自殺ドア」と呼ばれるだけあり、万一、走行中に開いてしまった場合、外に投げ出されやすく、半ドア状態で一般的な前ヒンジドアであれば前からの風圧によって閉まる方向に力が作用するものの、後ヒンジだと風圧で開く方向に力が加わる恐れがあり、うっかり半ドアで走り出すとドアが開いてしまうような危険につながる可能性があるからなのである。
「スーサイドドア」の名前の理由と生まれた理由とは画像はこちら
もっと言えば、低速走行中に何らかの緊急事態で前席から飛び降りなければならない場面では(そんなことまずないが)、飛び降りる際、ドアにぶつかってしまうのだ。そのあたりが、自殺ドアと呼ばれる所以だろう。