「やっぱりマツダは凄い」がわかる! 世界中で色んなメーカーが挑戦した「ロータリーエンジン」の歴史 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■ロータリーエンジンといえばマツダだがかつては多くのメーカーが挑戦していた

■自動車メーカーのみならずバイクメーカーも参入したがほぼすべてのメーカーが撤退した

■現代でも小型REの開発は続いておりドローンなどで活用されている

マツダ”以外”のロータリーの歴史

 ロータリーエンジンはいまでこそマツダの専売イメージがあるものの、そもそもはフェリックス・ヴァンケル博士というドイツ人エンジニアが作ったヴァンケル・エンジンが発祥です。 のちにヴァンケル博士はアウディの前身だったNSUで開発を続け、マツダをはじめ世界各国の自動車、バイク、農機メーカーなどがライセンス契約を結び、それぞれが独自の開発を進めていったのです。

 それでも、マツダのイメージが強いのは不完全だったヴァンケル・エンジンを独自の技術で完成させ、実用化に成功したからにほかなりません。極論してしまうと、マツダ以外のロータリーエンジンは失敗と撤退の歴史でしかないともいえるでしょう。

 また、現在実用化されているロータリーエンジンはマツダのRE技術があってこそ成り立っているといっても過言ではありません。市販にこぎつけたメーカーも少なくありませんが、ほとんどがREからは撤退していることこそ、ハードルの高さを物語っているのではないでしょうか。

 とはいえ、ロータリーエンジンの部品点数の少なさ(小型・軽量)低振動、そして同排気量であればピストン往復型エンジンよりも高出力といったメリットは魅力的なものですから、REの可能性を追求するメーカーは現在でも確実に存在しています。

 たとえば、イギリスのAIE社はこれまでREの弱点といわれた製造技術や冷却について、独自のソリューションでもって乗り越えています。彼らは大規模な設備投資が必要とされるシェルモールドの製造に対しては積層造形によって構造そのものを簡素化。製造工程そのものを簡略化することにも成功しています。

 また、おそらくは航空機向け星形エンジンなどにインスパイアされたであろう自己加圧式エアローター冷却システムもいいアイディアです。比較的小型のREに限定されるはずですが、AIE社はそれを逆手にとってドローン向けエンジンとして販売し、それなりの成功を収めている模様。

 この小型RE(40ACS)はさまざまな燃料(ガソリン、JP8、JP5、Jet-A1)に対応しているのも特徴で、先の冷却システムがそれぞれの燃焼温度に適応するという好循環が予想できます。

 冷却について悩んだのはメルセデス・ベンツも同様です。1969年のフランクフルトモーターショーに出品したコンセプトカー「C111」はRE3ローターをミッドシップ、ガルウイング、FRPボディなどすべてが画期的なマシンでした。むろん、ヴァンケル・エンジンを基に独自開発したREで、これまた独自の機械式インジェクションを加えるというチャレンジでしたが、やはり発熱が引き起こすアペックスシールの破損に完全には対応できなかったとされています。

 それでも、翌年には「C111/II」としてエンジンを4ローター化してみせました。これは2ローターのREを2基連結しつつ、出力はエンジン間の垂直軸からとる仕組みとされ、コンパクトながら高出力をアピールするには格好のケーススタディだったといえるでしょう。

 なお、メルセデス・ベンツは1970年代を襲ったオイルショックがRE撤退の理由だとあげていますが、アペックスシール問題が解決できなかったこと、3ローター向けエキセントリックシャフトを最後まで完成できなかったことが裏の理由だとする説もあります。

 このアペックスシールに苦労していたのは本家本元のヴァンケル博士とNSUも同様で、彼らとタッグを組んだシトロエンも解決することはついにできませんでした。NSUがREを搭載したスパイダーをリリースしたころ、シトロエンも試作車として1969年にはアミをベースとした「M35」を作り、1973年にはGSにRE 2ローターを搭載した「ビロトール」の市販にこぎつけます。

 が、市販というより試験販売にほど近いもので、数百台がモニターユーザーの手に渡り、一定期間後に「乗り続けるか、返却するか選択可能」というものだったそうです。シトロエンも思い切ったことをしたものですが、やっぱり未完成だったヴァンケル・エンジンは不具合が頻発し、モニターのほぼ全数が返却を選択し、戻されたビロトールはすべてスクラップという憂き目に。

 ちなみに、返却理由は燃費の悪さ、低速トルクの不足、高回転時の焼き付きなどが報告され、ダメなロータリーエンジンの典型といえるものばかりでした。


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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