この記事をまとめると
■日産自動車の純利益は93.5%減を記録したが売上は1.3%減にとどまっている
■9000人のリストラによる固定費削減は生産力低下を招く諸刃の剣でもある
■経生産能力の調整と人員整理ができればホンダと日産の経営統合が成功する可能性もある
衝撃だった日産の2024年度上半期決算
2024年12月、ホンダと日産が2026年8月に共同持株会社設立による経営統合を検討することを発表した。建前としては電動化や知能化といった領域において、より密接な関係となることでスケールメリットやコストメリットを実現できることが挙げられているが、世間一般には「ホンダが苦境の日産を救済する」といった見方が多いのも事実だろう。
その背景には、日産の2024年度上半期決算が非常に芳しくなかったことがある。
2024年11月に発表された日産の上半期決算においては当期純利益が前年度同期の2962億円から192億円へと93.5%も激減したことが話題となった。純利益が2770億円も減ってしまったと聞けば、もはや企業としての日産は風前の灯火と感じてしまうのもやむを得ない。となれば、経営統合や吸収合併といった大鉈を振るわないと生き残れないと考えるのは自明の理といえる。
しかしながら、純利益93.5%減という報道をみて「日産の販売が9割減」と捉えてしまうのは間違いだ。上半期決算で発表された数字でいえば、売上高は前年度同期が6兆633億円で、今期が5兆9842億円。791億円減ってはいるが、比率でいえば1.3%減でしかない。売上高=販売台数というわけではないが、日産車の販売が9割減になったわけではないことは覚えておきたい。
なぜ、売上高に対して純利益が大幅に減ってしまったのか。こうした状況を一般的に考えれば、固定費がかさんでいることにあると見ることができる。人件費や工場設備などの固定費は、売上に関係なく必要な企業の基礎代謝のようなもの。一日100台作ると固定費がペイできる状況において、99台しか売れていなければ少しずつマイナスが蓄積してしまう。
『1.01と0.99の法則」という言葉を聞いたことがあるかもしれない。毎日1%努力していけば一年後には37.8倍の能力になっているが、日々1%づつ手を抜いてしまうと一年後には0.03倍(99.7%減)の能力になってしまう、という成長に関する法則だ。
日産の上半期決算を見ていると、まさに『0.99の法則』が当てはまる状況に思えるのは筆者だけだろうか。おそらくなかの人は激烈な危機感を覚えるほどの状況ではなく、わずかに成長が足りないと感じるくらいなのだろう。