やっぱりBEV一辺倒じゃやっていけない! インドのショーで見かけた「フレックスフューエル」とは?

この記事をまとめると

■2025年1月17日から22日の6日間にわたって「オートエキスポ2025」が開催された

■「オートエキスポ2025」ではBEVに混じってフレックスフューエル車の展示も多かった

■インドではBEVだけに頼らない「マルチ・パス・ウェイ」な戦略がとられている

インドの自動車産業はBEV一辺倒じゃない

 2024年に自動車関連の複数のイベントをひとくくりにして開催されるようになった「バーラト(ヒンディー語でインドの意味)・モビリティ・グローバル・エキスポ」。そのひとくくりにされたイベントのひとつが「オートエキスポ(通称:デリーオートエキスポ)」だ。そして2025年1月17日より22日の会期で「第2回バーラト・モビリティ・グローバル・エキスポ2025」のもと、「オートエキスポ2025」も開催された。

 今回のオートエキスポの内容をひと言で表すならば、「BEV(バッテリー電気自動車)祭り」といっていい状況で、トラックも含め、四輪、二輪ともに各出展社ブースの主役はBEVとなっていた。

 そのオートエキスポ会場内トヨタブースへ行くと、プリウスPHEVが置いてあった。ただ、その化粧プレートを見ると、「FFV-PHEV」と書かれていた。また、メディアデー(開幕初日)とディーラーズデイ(2日目)にはブース内にほぼBEV「eビターラ」しか置いていなかったスズキだが、3日目には「ワゴンR Flex Fuel」が展示されていた。地元インドメーカーTATA(タタ)ブースへ行っても、コンパクト・クロスオーバーSUVとなる「パンチ」のフレックスフューエル車が展示されていた。

 インド政府は、2025年4月までに全国普及を目的としてガソリンに20%エタノールを混合させた「E20」の導入を進めている。エタノール車といえばブラジルが有名だが、自動車需要がますます旺盛となっていくインドでは、原油輸入コストの削減を進めるのが狙いの中心のようだ。将来的にはエタノール自体の輸出大国を目指しているといった話も聞いたことがある。

 インドでは、ライドシェアサービスで有名なウーバーで使われる車両やリキシャと呼ばれる三輪タクシーなどでは一部BEV化も始まっているが、多くはCNG(圧縮天然ガス)を燃料としている。

 また、牛の糞尿が由来となるCBG(バイオガス)仕様のスズキ・ワゴンR(インド仕様なので日本のワゴンRではない)が日本でもJMS(ジャパン・モビリティ・ショー)などに出品され話題となっている。そもそもベースがCNG仕様であり、CBGも使える「バイフューエル」車となっているのも大きな特徴のひとつだ。

 年間を通じて信じられない高温の日々が続くのも珍しくないインドでは、そのような時期には停電も頻発しているとのこと。そのなかでも、政府としてはBEV普及に比重を置いているようだが、国内の事情を考えても、「BEV一択」でクルマの将来を語るわけにもいかないのもまた現実のようである。

 BEV生産大国にして世界に出荷したいという思惑もあるようだが、世界最悪ともいわれる大気汚染の改善も大きな使命でもあるし、原油輸入コストの負担減など、さまざまな諸問題解決のために「マルチ・パス・ウェイ」が進んでいるという印象を受けるのも筆者だけではないはずだ。

 日本でも2024年11月に経済産業省がエタノール混合比率10%となる「E10」の導入を2030年までに進める方針を示したと報道されている。導入開始の背景はあくまでカーボンニュートラルをめざす一貫など地球への環境負荷低減となるが、インドではすでにE85やE100仕様のモデルもオートエキスポ2025では出品されている。日本ではインドほど国土が広くはないので、混合燃料の自前生産までは想定できない。混合燃料とて輸入に頼らざるをえないところでインドとは事情は異なってくる。

 日本メーカーは幸いとでもいうべきか現状ではBEVにのめりこんでいる状況にはない。日系トップのトヨタは水素燃料も含めて「マルチ・パス・ウェイ」を積極的にアピールしている。世界第3位のインド市場の動向次第ではHEV(ハイブリッド車)で熱い視線を世界から浴びている日本車は、さらなる熱視線を世界から浴びることになるかもしれない。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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