この記事をまとめると
■アートレーシングでは多数のレプリカ車両を手掛けている
■スズキ・カプチーノをベースに「オースチン・ヒーレー・スプライト MkI」を作り上げた
■軽自動車登録のままで乗ることができるボディキットも販売している
カプチーノが匠の技で大人気旧車に生まれ変わる
“カニ目”というワードを目にして「おっ!」と反応するのはおそらく70代のクルマ好きでしょう。しかもライトウエイト・スポーツカーの本場である英国車のファンである可能性が高いと推測されます。
その“カニ目”というのは、今でも根強い人気を誇っている英国の旧い名車のニックネームなんです。その名車をオマージュして、国産の軽自動車でその姿を再現してしまったクルマがあるそうです。ここでは、そのレプリカ車両について取材してきましたので、紹介していきましょう。
■オースチン・ヒーレー・スプライトとはどんなクルマ?
ここで紹介する「アートレーシング」が製作したレプリカ車両「アート・ヒーレー・スプライト MkI」のオマージュもとになった車両は、英国の誇るクラシックの名車のなかの1台、「オースチン・ヒーレー・スプライト MkI」です。
やや長い名称はどこで区切ったらいいのか迷ってしまいますが、メーカー名が「オースチン・ヒーレー」で車名が「スプライト MkI」となります。
「オースチン・ヒーレー」社というのは、ウーズレー、モーリス、バンデンプラス、MGなどの英国の自動車ブランドを複数抱えるBMC(ブリティッシュ・モーター・カンパニー)のスポーツカーブランドです。「スプライト・MkI」は1958年から2年間だけ発売されたオープンボディのコンパクトスポーツです。
大衆車の「モーリス・マイナー」などの自社資源を最大限活用してコストを下げ、手ごろな価格で本格的な走りのスポーツカーが購入できるとあって、英国に留まらず、北米などでも人気を博し、4万8千台ほどを売り上げました。
搭載エンジンは948ccの直列4気筒OHVタイプで、43馬力を発揮。手軽に本格走行が楽しめることをアピールするために国際レースやラリーに参戦すると、個人でも購入して参戦する流れができてひとつのブームを生みました。
そして今に至るまで、英国の名車の1台として多くのファンをキープしています。
このまん丸のヘッドライトが中央に寄った愛嬌のある特徴的な顔つきから、英国では「フロッグアイ」、米国では「バグアイ」、日本では「カニ目」というニックネームが与えられて親しまれました。
■名車「オースチン・ヒーレー・スプライトMkⅠ」レプリカのベースは「スズキ・カプチーノ」
この「アート・ヒーレー・スプライトMkI」を製作したのは、愛知のカスタムショップ「アートレーシング」代表の村手さん。
この「スプライトMkI」を製作する以前に、「ベイビー・コブラ」という「ACコブラMkIII 427」をオマージュしたレプリカ車両を製作、販売してその筋では大きな話題を作った経緯があります。
そのレプリカシリーズを再び企画することになり、目を付けたのが英国のクラシック車を代表する「オースチン・ヒーレー・スプライトMkI」でした。
1度手掛けて勝手がわかっている「スズキ・カプチーノ」とサイズがほぼ変わらず、オープンボディという共通点も活用できるというマッチングのよさ、そして今でも根強く人気がある車種ということで選ばれました。
ちなみに村手さんと「スプライト MkI」はほぼ同じ歳だそうで、それも縁だという意識も働いたようです。
■外装の再現は手作業によるアルミ板からの成形でおこなわれた
このシンプルで流麗な面をもつ特徴的なボディを再現するにあたり、基本の造形は村手さんが得意とする、アルミの1枚板から曲げたり延ばしたり絞ったりしてフォルムを作り上げる方法でおこなわれました。
使われる機材は至ってシンプルな構造のものですが、熟練の村手さんの手に掛かるとみるみる間にただの平板が魅惑の面をもつピースに生まれ変わっていきます。
そのピースをつなぎ合わせ、ほぼすべてのカタチを手作業で作り上げていくのは工芸品作りのプロセスを連想させます。
この「アート・ヒーレー・スプライトMkI」はコンプリートカー及び換装キットとして販売されるもので、製品版の外装部品はそのマスターモデルを元にFRPで成形されたものになりますが、内装のパネル類などはアルミ板から成形された物が使われており、熟練の仕事による仕上げが感じられる内容となっています。