この記事をまとめると
■2024年の年末に日産とホンダの経営統合に関する報道があった
■日産とホンダでは売れ筋となるモデルのカテゴリーが被っている
■両社の経営統合の難しさというものを感じる
ガチンコのライバル車が売れ筋モデルになっている両社
ここ最近の自動車業界最大のトピックといえば、2024年末に発表された日産自動車(以下日産)と本田技研工業(以下ホンダ)が経営統合の協議に入ったことを発表したことだろう。
メディアの多くは「統合すれば世界3位の販売規模をもつメーカーが誕生する」といったことを声高に叫んでいた。ただ、それと同じぐらいに日産とホンダの統合には課題が山積みしているとも報じている。それは我われにも身近な国内販売の現場でも課題を見てとることができる。
まずひとつ目が、軽自動車販売の依存がともに高いことにある。筆者が試算してみると、新車販売台数における軽自動車販売比率は、両社とも4割前後となっている。日産の軽自動車は商用車や一部商用車派生乗用車を除けば、三菱自動車との合弁会社(NMKV)のマネジメントのもと、日産が企画及び開発を行い三菱自動車の工場で生産しており、ホンダは軽自動車の自社開発及び自社生産を行っている。
とくにホンダでは、軽自動車といってもそのほとんどはN-BOXとなっており、ホンダ全体の新車販売においてもN-BOXへの依存度が高い。軽自動車はとにかく「売ってナンボ」の世界(薄利多売)なので、ホンダと日産が経営統合すれば、その扱いは大きな注目に値する。経営統合した2社でまったく異なる軽自動車をそれぞれのブランドで販売するほど不合理なことはない。
単純に考えれば、統合後はバッジだけ異なる双子車に集約して量販効果を高めるということも考えられるが、軽自動車販売の比重が高いメーカーは体力を消耗するだけで儲けにもならない。したがって、経営統合が実現した場合、その象徴として統一車種にするのか、それとも両社ともに軽自動車事業から完全撤退するのかは要注目だ。もしかしたら、スズキやダイハツからOEMを受けて継続販売するという可能性もあり、こちらのほうが理想的なようにも見える。
日産は軽自動車規格のBEV(電気自動車)となるサクラをラインアップしているが、これはホンダへOEMするというのもありかもしれない。
日産、ホンダとも軽自動車以外では売れ筋モデルが少数となり、しかも被ることが多いのも課題となるだろう。とくに日産では現状売れ筋モデルはかなり限定的で、軽自動車、ノートそしてセレナぐらいとなっている。ホンダもフィットがあってヤリスやノートがライバルとなっている。
セレナは、ホンダ・ステップワゴンやトヨタ・ノア&ヴォクシーとガチンコのライバル関係となっている。セレナとステップワゴンはともにそれぞれのブランドで売れ筋モデルであり、結果として軽自動車、ノートとフィット、セレナとステップワゴンは売れ筋モデルとしても被っている。
これがたとえば、コンパクトモデルをホンダが、日産が大排気量の上級モデルを相互補完すればシナジー効果は十分得られることになるだろう。
統合の背景を「BEV開発」などの次世代技術開発においてメリットが大きいと強調するが、その足もとでは、放っておけば統合後の仁義なき主導権争いのようなものが発生するのではないかという不安要素のほうが目立つ。
軽自動車をお互いやめる、あるいは日産ブランドは上級車ラインアップに絞り込むなど、よほど大胆なことを実行していかないといけないような気がすると考えると、両社の経営統合の難しさというものを改めて感じてしまった。