ヒゲとか呼ばないで! 「スピュー」という立派な名前のある「新品タイヤ」の突起物は「むしって」もいいの?

この記事をまとめると

■新品のタイヤについている「ヒゲ」のような突起物は専門用語で「スピュー」という

■タイヤの成形時に余分なゴムが冷えて固まったものだ

■「スピュー」は取っても取らなくても走行性能には影響しない

タイヤに生えてるヒゲのようなモノの正体

 新品タイヤを購入した際、トレッドパターン(溝)の部分やサイドウォールに細いゴム状の突起物が生えているのを目にしたことがあるだろう。一般的に「タイヤのヒゲ」と呼ばれるこの突起物は、専門用語では「スピュー」(Spew)と呼ばれている。まるで植物の芽のように見えるこの突起物、じつはタイヤ製造工程において必然的に発生する副産物だ。

<スピューが発生する理由と役割>

 タイヤは金型を使用して製造される。高温で溶かされたゴムを金型に流し込み、加硫(化学反応による硬化)処理によって弾力性と耐久性が向上し、タイヤが成形される。タイヤの金型には、空気や余分なゴムを排出するための細い溝「ベントホール」が設けられている。加硫の過程で、このベントホールから押し出された余分なゴムが冷えて固まったものがスピューだ。

 つまり、スピューはタイヤ製造時にどうしてもできるもので、金型内の空気を適切に逃がすことで、製品の品質を確保する手助けをしているのだ。もしこのベントがなければ、金型内に空気が残留してしまい、タイヤに気泡や成形不良が発生する可能性が高くなってしまう。

<スピューの処理方法と注意点>

 では、このタイヤに残ったスピューは除去すべきだろうか? 結論からいえば、スピューは取っても取らなくても走行性能にはほとんど影響しない。スピューは非常に細いため、走行中に自然に取れてしまうことが多い。そのため、とくに気にする必要はないのだ。

 ただし、なかには気になる人もいるだろう。実際、このスピューは手で簡単に取れるが、無理に引っ張るとタイヤを傷つける可能性があるのでやめたほうがいい。それでも気になる人は、カッターナイフなどを使い、タイヤを傷つけないように丁寧に切り取ろう。

 スピューが付いたままでもタイヤの性能や安全性には影響しない。これはタイヤメーカーも認めている事実だ。ただし、見た目を重視するのであれば、軽く取り除くことは問題ない。その際は、必ずタイヤが冷えている状態で作業を行うことが推奨される。

 なお、スピューの存在は、そのタイヤが新品であることの証でもある。中古タイヤには通常、スピューは残っていない。つまり、タイヤ購入時にスピューの存在を確認することで、確実に新品であることがわかるという利点もある。また、中古タイヤなのにスピューが残っている場合は、製造後あまり時間が経っていない、走行距離が少ないタイヤである可能性が高い。

 ただし、スピューの有無だけでタイヤの状態を完全に判断するのは難しいので、トレッド面の溝の深さやタイヤ側面のひび割れなども総合的にチェックする必要はある。

 このように、一見すると不要に思えるスピューだが、じつはタイヤ製造における重要な役割を担っている。その処理は個人の判断に委ねられるが、安全な方法で行うことがなにより大切である。

 タイヤはクルマの唯一の路面接地部分であり、安全運転の要となる重要なパーツだ。些細なことでも丁寧に扱うことを心がけたい。


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