フロントガラスがデカいだけに「撥水」しないと命の危険! トラック乗りなら常識の豪雨対策とは

この記事をまとめると

■ワイパーでも対応しきれないほどの大雨が降ることがある

■トラックやバスはフロントガラスが大きいためにより危険性が高い

■このような問題を解決すべく開発された、撥水剤について解説

トラックやバスにはスプレータイプがおすすめ

 急に降り出す雨をかつては「にわか雨」などと呼んだが、近年の「ゲリラ豪雨」はそんな生易しいものではない。いきなり、天井をぶち抜いてバケツをひっくり返したような雨が、地域を限定して集中的に降り注ぐ。傘をもっていなければ、雨宿りの場所を探す間にずぶ濡れになってしまうほどの酷さである。クルマに乗っていると濡れることはないものの、前方の視界は霧かと見紛うほどひどく、ワイパーが折れんばかりに活躍しても、著しい効果は期待できない。

 このワイパーは「窓ふき器」として法律で装備が義務付けられているパーツで、基本的な機構は1900年ごろから変わっていない。通常の雨であれば、クルマのフロントガラスに降り注いで流れ落ちるところを、ワイパーが拭き取るので視界が確保できる。ところが、「ゲリラ豪雨」のような激しい雨の場合、ワイパーの拭き取り能力を超えた雨が降り注ぐから、視界不良になって運転にも支障が出る。トラックやバスはフロントガラスが大きいために、より危険度が増しているのだ。

 そういった問題を解決する一助にしようと開発されたのが、フロントガラス向けの撥水剤である。1980年代ごろ市場に登場し、その後は自動車用ケミカルメーカーを中心に、順次商品バリエーションが広がっていった。雨によって視界が悪くなるのは雨水がガラス表面に付着するためだが、それはガラスにミクロ単位の細かな凹凸があるからである。撥水剤の原理は、その凹凸を埋めることによってガラス表面を滑らかにすると同時に、薬剤の作用で水をはじかせて視界の確保を可能にするというものだ。

 現在市販されている撥水剤のタイプは大別するとふたつあり、ひとつはシリコン系のものである。これは、シリコンポリマーをガラス表面と化学的に結合させ、表面の凹凸を埋めることで均一な撥水被膜を形成させるというものだ。もうひとつは、フッ素系のタイプ。フッ素系分子をコーティングポリマーのなかに含ませ、シリコン系と同様に化学結合をさせている。フッ素分子が混入することにより、ガラスとの結合性が高まるために持続性に優れるという特徴をもっているのだ。

 フロントガラスに施工する方法は商品によって細かな違いがあるものの、おおむね以下の手順に沿って行われる。

1)フロントガラスを洗って汚れをとる
2)撥水剤を塗布する
3)余分な撥水剤を軽く拭きとる

 これだけの作業で一定の期間、雨をはじいて視界確保が容易になるのだから、なかなか使えるグッズだといえよう。

 トラックやバスは走行のルートや時間に自由度が低く走行距離も長いので、撥水剤はより耐久性の高いフッ素系のものをあらかじめ施工しておくことがおすすめだ。また、車高があってフロントガラスが大きいので急な雨に備えるには、シートタイプよりスプレータイプのほうが使い勝手がよいだろう。

 雨対策のケミカルグッズは、撥水剤だけではない。真逆の発想である親水剤というのもある。「撥水は水をはじく技術だが「親水」はガラスに水をなじませるというもの。住宅設備機器を扱うTOTOが開発した「ハイドロテクト」という光触媒を利用した技術が基になっている。製品特性上、サイドミラーなどを対象(フロントガラスには使用不可とされている)にしているが、水滴を防ぐ効果は高いので視界確保の役に立つ。雨対策ケミカルをうまく使い、「ゲリラ豪雨」に備えておきたいものだ。


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