トラックやタクシーは「任意保険未加入」の事業者もあるってマジか! 個人の乗用車とは異なる「事故」の際の補償事情

この記事をまとめると

■乗用車も商用車も自動車保険の仕組みは基本的に同じ

■ただし10台以上の車両を所有する場合はフリート契約をすることになる

■自動車保険をあえて利用しないトラック事業者も存在する

10台以上所有している場合はフリート契約となる

 自動車保険を扱っているのは損害保険会社だ。船舶や住宅の火災保険など、自動車保険以外にもさまざまな保険サービスを展開している。そして、乗用車も商用車も自動車保険の仕組みは基本的には同じ。ただし、10台以上の車両がある事業所は、フリート契約といって1台ずつ保険契約を結ぶのではなく、まとめて契約を結ぶことになる。これはタクシーや会社の営業車両と同じ扱いだ。

 フリート契約の場合、前年の保険金の支払いと前年の割引率、車両の台数によって保険料が決まるが、個人向けの自動車保険と違って料率クラスや等級などはない。そのため、長年交通事故がなく、保険金の支払いを受けなければ割引率は80%近くにまでなることもあるが、毎年のように保険金の支払いを受けると恐ろしいほど保険料が上昇することになる。

 保険料の割増には上限がないばかりか、あまりに事故が多い事業者は保険会社が保険契約を断ることもある。自賠責保険はすべてのクルマに加入が義務付けられているが、自動車保険は別名任意保険とも呼ばれるとおり、加入は任意(個別の判断に委ねる)であり、保険会社も絶対に引き受けなければならないわけではないのだ。

 ユーザーのなかには、自動車保険を扱う損害保険会社を公的なサービス機関に近い存在だと捉えている人もいるようだが、損保会社はあくまで営利企業だ。自動車保険は金融商品で、販売して集めた資金を運用することで利益を上げているのである。リスクが高すぎると判断された企業やドライバーとは保険契約を結ばない、という選択肢もあるのだ。

 したがって、保険料が高くなってしまう中規模以上のトラック事業者のなかには、自動車保険をあえて利用せずに保険料分を積み立てて、交通事故の際には賠償金をその積み立てから支払うところもある。これはトラック事業者に限らず、タクシー事業者でも同様だ。

 自動車保険に加入していないと聞くと、万が一の交通事故の際、補償などの対応を心配する人もいるだろう。しかし、そういう事業者には示談交渉の専門スタッフ(総務などが兼務している場合ある)がいるので、交通事故の対応は社内で行えるのだ。もちろん補償をできるだけ少なくして企業の収益を確保しようと交渉してくるだろうが、それは保険会社とて同じこと。だからこそ自分の自動車保険には、万が一の交渉に備えて弁護士特約をつけておくことだ。

 弁護士特約も保険会社によって、交通事故にしか使えないものや、弁護士を利用する場合に幅広く使えるものなどさまざまなので、保険料の安さだけで自動車保険を選ばないほうがいいだろう。

 トラックと交通事故を起こすと、トラックの損傷によっては休業補償を請求されたり、積荷の状態や荷受け側の状況によっては損害賠償を請求される可能性もある。自分の方が過失が少ないとしても、お互い走行中であれば、過失割合は100対0にはならないので、損害の大きいトラック側から請求を受けることもありうるのだ。

 それだけに、ドライバーは交通安全に努めるだけでなく、自分の自動車保険は十分な補償額と手厚いサポートを受けられる内容にしておくことが重要だ。


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