スバル車の走りはいいけど水平対向は燃費悪いからなぁ……は合ってるようで間違い! 「悪燃費」の噂はどこから発生した? (1/2ページ)

この記事をまとめると

スバルの水平対向エンジンは燃費が悪いと認識されている

■ボア値がストローク値よりも大きいオーバースクエア型は燃費性能では不利となる

■2010年代以降はロングストローク型を登場させて燃費性能の改善に取り組んでいる

パワーやトルクはあるけど燃費はよろしくないスバルの水平対向

 スバルの水平対向エンジンは燃費が悪い、という認識をもっている方が少なからずいる。確かに、スバルが企業イメージの全面刷新を図った起死回生の新型車、1989年登場の初代レガシィ(BC型、BF型)用EJ型水平対向4気筒エンジンシリーズは、パワー/トルク値、ドライバビリティなどの注目される諸性能は、当時のトップレベルに達していていたが、なぜか燃費性能に優れないことが徐々に問題となっていた。

 スバルのエンジンはあまり燃費がよくない、というありがたくない評判がついてしまったわけだが、この時代のスバルの水平対向には、ある共通したエンジン仕様の特徴があった。シリンダーのボア・ストローク値が、量産車としてはかなりオーバースクエアな方向で設定されていたことだ。スクエアとは四角の意味で、ボアとストロークが同値の仕様をスクエアエンジン、ボア値がストローク値より大きな仕様をオーバースクエアエンジン、逆にストローク値がボア値を上まわっている仕様をロングストロークエンジンと呼んでいる。

 初代レガシィの登場から約20年ほど、スバルの水平対向4気筒エンジンはEJ系が基本となり、レガシィ/インプレッサ/フォレスターの主力3モデルに1500ccから2500ccまでのエンジン排気量を用意して臨んでいた。

 そしてこのEJ系エンジンは、1994ccのEJ20型がボア92mm×ストローク75mm、1820ccのEJ18型がボア87.9mm×ストローク75mm、1597ccのEJ16型がボア87.9mm×ストローク65.8mm、1493ccのEJ15型がボア85mm×ストローク65.8mm、2457ccと4気筒系では最大排気量のEJ25型がボア99.5mm×ストローク79mmと、どれもボアがストロークを大きく上まわるオーバースクエア仕様で作られていた。

 なぜか? 水平対向エンジンは、ふたつのシリンダーバンクが対向する形でレイアウトされるため、ストローク値を10mm伸ばすと両側合わせて20mmエンジン幅が拡大することになる。大した数値ではない、と考えるのは大間違いで、車両を設計するにあたり搭載エンジンの幅が20mm違うことは、致命的なハンデとなってしまう。

 もちろん、これが直立レイアウトの直列エンジンならそれほど問題にならないのだが、ふたつのシリンダーバンクが水平に寝かされ対向レイアウトとなる水平対向では、長大なエンジン幅としてエンジンルームへの搭載を一気に難しいものへと変えてしまうことになる。

 エンジン幅を抑えるためにはストローク値を抑えなければならない。そのためには、排気量はボア値で稼ぐしかないという選択肢しか残らないことになり、結果的にスバルの水平対向エンジンは、どれも幅の拡大を嫌ったことからボア値が大きなオーバースクエア仕様になっていた、という経緯がある。


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