一度使ったら「足放せる」けど「手放せない」! クルマの超楽ちん装備「クルコン」はじつに65年以上の歴史があった

この記事をまとめると

■クルーズコントロールは1958年にクライスラーがインペリアルに初めて導入した

■当時のクルーズコントロールは一定速度を維持するだけの機能しかなかった

■ACCのような技術は先進安全自動車(ASV)の研究・開発から生まれた

クルーズコントロールは意外と昔からあった

 クルーズコントロールは、設定した速度を自動的に保ち、走り続ける機能である。米国のクライスラー(現在はステランティスの一角)が、1958年、セダンのインペリアルにはじめて導入したのが歴史のスタートだ。

 広大なアメリカ大陸を横断するような場合はもちろん、都市近郊でも、交通量の少ない道を制限速度で淡々と移動し続けるとき、運転者が同じアクセル開度でペダルを踏んでいることに疲れてしまう。山岳地帯もあるが、国土の多くが平坦な大陸での長距離移動という米国特有の地理的条件から生まれた自動車技術といえる。

 インペリアルに採用される形で、誕生から6年後の1964年には、日本でトヨタがクラウン・エイトに注文装備として設定した。当時の日本車は、トヨタに限らず米国市場への進出を含め、技術開発においても米国を注視する傾向があり、なかでも国産初のV型8気筒エンジンを搭載したクラウン・エイトの注文装備は、日本の自動車メーカーが米国をいかに重視していたかをうかがわせる。

 なお、当時のクルーズコントロールは、単に一定速度を維持するだけの機能で、交通量の多い道路で前を走るクルマとの車間距離を調節する技術は使われていない。

 今日の、アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)のように、前を走るクルマとの車間距離を維持するため速度を調節し、なおかつ追従しながら走れる機能が生まれるのは、衝突安全のための自動ブレーキが実用化されて以降となる。

 プリクラッシュ・セーフティ・システムと呼ばれる衝突予防機能は、1991年にはじまった先進安全自動車(ASV)の研究・開発から生まれた。前のクルマへの追突を防止するには、車間距離の認識と、そこから制動して衝突を回避するための速度とブレーキ性能の関係を管理し、必要に応じて作動させるセンサーやコンピュータ制御、作動装置などが必要になる。

 それらの機器や知能は、そのままACCに活用できる。

 速度調整には、エンジンやモーターの出力調整とともに、ブレーキの関与も含まれる。運転者の操作と別にブレーキを機能させる仕組みは、1970年代末のABS(アンチロック・ブレーキ・システム)実用化の時代までさかのぼり、これは、ASVの研究・開発よりさらに昔のことだ。

 もともと、クルマをより安全にするために開発された技術が、同じ機能を応用することで、快適な移動を提供する技術の発展にも寄与している。その一例を、クルーズコントロールからACCへの発展の歴史に見ることができる。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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