「カーボン」「チタン」はクルマ好きの大好物! でもなんで高価な素材を有り難がるのか?

この記事をまとめると

■カーボンやチタンなどの軽くて強い素材はクルマ好きからありがたられている

■運動性能の高いクルマを作るなら1グラムでも軽いクルマのほうがいい

■軽量化と空力を極めることがレーシングカーやスポーツカーの条件のひとつになる

スポーツカーはいつでも軽さを追求してきた

 カーボンやチタンなど、クルマ好きが好む素材はなぜ高価なのにありがたがられるのかというと、軽くて強い素材だからだ。

 物理の賢人、アイザック・ニュートン先生は、「運動とは慣性に打ち勝つこと」と喝破されている。慣性とは物体の質量に比例するものなので、運動能力を高める第一の条件は、軽いこと。

 軽いクルマは動き出しがいい=加速がいい。軽いクルマはブレーキもよく利く。そして軽いクルマは小さな力でヨーが発生し、小さな力でヨーが収束する。要するに運動性能の高いクルマを作るなら、1グラムでも軽いクルマを作るしかない。

「ちょっと待って。物理でいうのなら、F=μmg(グリップ力=タイヤと路面間の摩擦係数×車重)なのだから、駆動力の伝達効率、トラクションを考えたら、ある程度車重があったほうが有利なのでは? 実際、1740kgもあるR35GT-Rがニュルでも最速タイムを記録できたし……」。

 たしかにそれも一理ある。ぬかるみでスリップしたときに、後輪駆動車ならトランクに荷物や人を乗せると、トラクションがかかって、ぬかるみを脱出できることは確かだし、大雨のとき、ハイドロプレーニングに強いのは、軽自動車よりトラックだったりするわけで。

 また、重たいクルマも、ターボでパワーを稼ぎ、4WDでトラクションを稼げば、加速面は引けを取らない。重くて止まらないのは、ブレーキを大型化して、太くて高性能なタイヤを履けばなんとかなる。コーナリングはアシを固めて、前後の重量バランスを整えてやればなんとかなる。

 レーシングカーのようにレギュレーションでエンジンの排気量や過給機の有無が決まっていなくて、駆動方式も自由で、タイヤやブレーキサイズも規定がなければ、軽くてペラペラなクルマより、ハイテク満載のハイパワーモデルのほうが速いのでは?

 たしかにそれも否定できない。しかし、車重が重いクルマはブレーキもタイヤの負担も大きいから、どちらも消耗が早い。そして、もともとタイヤへの依存度が高いから、タイヤがすり減ったら、もういい走りはできなくなる。

 雨が降っても同じで、やっぱり重いクルマは止まらないし曲がらない。ブッシュやダンパーのヘタりも早いし、これらがヘタるとパリッとした走りは期待できない。燃費だって悪いので、とにかく維持費が高くつく……。

 つまり、車重が重くて速いクルマは存在するが、それらのクルマが中古車になって、くたびれてくると、メッキがはがれて操縦性・運動性が著しく低下してしまうのは否めないということだ。

 その点、軽いクルマは、エンジンパワーがプアでも、ブレーキが小さくても、タイヤがしょぼくても、運動能力が高く、10年経っても20年経ってもキビキビとした楽しい走りが味わえる。

 この世界には、「クルマは劣化するとニュートラルに戻る」という格言があるが、新車に限っていえば、車重が重くてもパフォーマンスの高いスポーツカーは作れるが、真のスポーツカーは軽いクルマしかありえない。

 軽さのデメリットであるトラクションや、空気抵抗による操安性の影響は、レーシングカーのようにエアロダイナミクスで解決するのが最適解だ。ただし、いまの時代、軽さ=手間=コストなので、軽さが一番の贅沢ともいえるだろう。

 それでも、軽量化と空力、これを極めることが、レーシングカー、スポーツカーの条件になるのは間違いない。


藤田竜太 FUJITA RYUTA

モータリングライター

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日産スカイラインGT-R(R32)/ユーノス・ロードスター(NA6)
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