この記事をまとめると
■WRCラリージャパンではグラベルクルーとメテオクルーが活躍
■競技開始の数時間前にスペシャルステージを走行し路面のチェックするのがグラベルクルー
■スペシャルステージの路面温度や気温、天気や路面状況などを報告するのがメテオクルーだ
ラリージャパンを影から支えたグラベルクルーとメテオクルー
2024年のWRC第13戦「ラリージャパン」が11月21〜24日、愛知県・岐阜県を舞台に開催。日本のワイディングを舞台に、各クラスで激しいバトルが展開されていたのだが、そのスリリングな走りを支えていたのが、“グラベルクルー”と“メテオクルー”だ。
グラベルクルーとは、WRCのターマックラウンドに導入されているシステムで、各ワークスチームおよびWRC2の各チームのクルーが、競技が行われる数時間前にスペシャルステージを走行し、路面のチェックを実施。グラベルクルーからもたされた情報をもとに、各ドライバーはタイヤ選択を行ったり、ペースノートの書き換えを行っている。
今季のラリージャパンは、幸いシェイクダウンを含めて4日間ともに好天に恵まれたものの、それでも2ループ目の走行では、インカットによる石や土の散乱は重要なインフォメーションで、実際、デイ3のタイヤフィッティングゾーンのTCでも勝田貴元選手は、グラベルクルーのインフォメーションを受けて、ペースノートのアップデートを行なっていた。
ちなみに、グラベルクルーのドライバーにはラリー経験の豊富なドライバーが起用されることが多く、PWRC(プロダクションカー世界ラリー選手権)やIRC(インターコンチネンタル・ラリー・チャレンジ)で活躍したユホ・ハンニネンが勝田貴元のグラベルクルーを担当。
さらに、各チームがグラベルクルー用に使用されているマシンが、ラリー前のレッキ時に使用された車両で、トヨタGAZOOレーシングWRTはGRヤリス、ヒュンデSHELL MOBIS WRTはBMW 1シリーズ、Mスポーツ・フォードWRTはフォード・フォーカスRSを使用している。
一方、ラリーでの路面状況において欠かすことのできない存在となるのが、メテオクルー(ウェザークルー)だといえるだろう。WRCではターマック、グラベルにかかわらず、各ワークスームは事前にスペシャルステージへスタッフを派遣。メテオクルーは路面温度や気温の計測データのほか、天気や路面状況などをスペシャルステージから報告し、その情報をもとに各ドライバーはタイヤ選択を行っている。
実際、筆者が撮影したSS2「Isegami’s Tunnel」にもスタートから約9kmのジャンクションでトヨタGAZOOレーシングWRTおよびMスポーツ・フォードWRTのメテオクルーが、路面温度や気温のデータ測定など情報収集を実施。ときには取り付け道路から2km、3km地点でメテオクルーを見かけることも少なくはなく、そのことだけでもメテオクルーの業務内容の過酷さが窺えることだろう。
ちなみに、トヨタGAZOOレーシングWRTおよびヒュンデSHELL MOBIS WRTは、ヨーロッパからレギュラーのメテオクルーが来日して業務に当たっていたが、Mスポーツ・フォードWRTは、日本でラリーウィークのみ雇った日本人スタッフが業務を担当。Mスポーツの台所事情を感じさせたが、いずれにしてもグラベルクルーとメテオクルーがいたからこそ、各ドライバーたちは素晴らしいパフォーマンスを見せることができたのである。