この記事をまとめると
■1980年代ごろまでは新聞社やテレビ局の社旗がついたハイヤーが街なかを走っていた
■社旗には法的な優先通行権などはないが一般車両と区別するために装着していた
■現在は御料車に小旗がついている程度でほとんど見かけなくなった
いまでは見かけることがない社旗を掲げたクルマ
いまから40年前ぐらいだろうか。1980年代の東京では、クルマのバンパーやフェンダーに小旗を取り付けて、はためかせながら走っているクルマをけっこう見かけた。正確な時期はわからないが、バブル崩壊とともにいきなり廃れたイメージがあるが、あれはいったい???
あの旗はいわゆる「社旗」というもので、主に新聞社やテレビ局がチャーターした黒塗りのハイヤーや社用車についていた。
社旗とはその名のとおり、会社のロゴ・マークなどを旗にしたもので、立ち入り規制のある事件現場などに記者が急行するときに、マスコミ関係者であることをアピールするために用いられていたようだ。緊急車両ではないので、法的な優先通行権などは与えられていないが、現場で一般車両と識別する意味合いがあった。
※画像はイメージ
また、オートバイでもフロントフォークにポールを立て、そこに社旗をなびかせて走るプレスライダーたちも活躍していた。彼らは事件現場や、空港などから、新聞社あるいはテレビ局まで、撮影したフィルムを急送したり、原稿その他の報道素材を大急ぎで届ける使命があって、ある意味プロのストリートライダーとして、一目置かれていた存在でもあった。競馬新聞のライダーなども、現場への到着の速さが、新聞の売り上げを左右していたので、各社腕っこきのライダーを揃えていた記憶がある。
もちろん、いまでも事件があれば記者は取材に行くし、プレスライダーだって存在しているが、クルマやバイクに社旗を立てて移動する風習はなくなった。法的特権があるわけでもないし、なんだか威圧的だし、マスコミとして目立ちたくない場面も増えてきたし、何より経費節減などの影響もあって、旗を立てる文化は自然消滅してしまったのが現状だ。
当今、乗用車に取り付ける小旗というと、天皇皇后の専用車両=御料自動車に、天皇が乗車する際、ボンネット先頭に掲げる天皇旗ぐらいしか見る機会がないのでは……?