この記事をまとめると
■クルマの乗員定員では「子ども」3人は「大人」ふたり分と数える
■道路運送車両の保安基準では12歳未満を「子ども」とする
■道路交通法では子どものシートベルト装着やチャイルドシート使用に例外を認めている
子どもは3人で大人ふたりとカウントされる
前を走っているミニバンを見ていたら、やたらと頭の数がたくさん動いているように見える? もしや、乗車定員違反では? なんて疑ってしまったことはありませんか?
じつは、クルマのカタログなどに記載されている乗車定員というのは「大人」の人数でカウントされています。そして、「子ども」を定員としてカウントする際には、「大人」は「子ども」1.5人分と換算され、「子ども」3人で「大人」ふたりと同じとカウントされるのです。
では「大人」と「子ども」はどう区別されるのかというと、道路運送車両の保安基準第53条第2項に記載されています。
「前項の乗車定員は、十二歳以上の者の数をもつて表すものとする。この場合において、十二歳以上の者一人は、十二歳未満の小児又は幼児一・五人に相当するものとする。」
ということで、12歳以上が「大人」、12歳未満が「子ども」となっており、身長や体重などは関係ありません。このことから計算すると、7人乗りミニバンに乗車できる子どもの人数は、運転席には必ず大人が座ることになるため、最大で子どもが9人まで乗車可能ということになります。
ただし、ここで新たな疑問が湧いてきませんか? 道路交通法では、乗車する全員にシートベルトの着用が義務付けられており、6歳未満の子どもにはチャイルドシート(幼児用補助装置)の着用が義務付けられています。7人乗りのミニバンに大人と子どもで最大10人が乗ったとして、ミニバンには7人分のシートベルトしか装備されていません。
ましてや、9人の子どもがすべて6歳未満だったとすると、必要なチャイルドシートをすべて座席に固定することもできないはずです。「それって、いいの?」と思うかもしれませんが、乗車中はいつどこで危険な目に遭うかもしれないわけですから、シートベルトやチャイルドシートを着用しなくていいはずはありません。
ですが、現時点で矛盾しているのが、道路交通法で「例外」を認めてしまっているところです。
シートベルトについては、「運転者席以外の座席の数を超える数の者を乗車させるためこれらの者のうちに座席ベルトを装着させることができない者がある場合において、当該座席ベルトを装着させることができない者を運転者席以外の乗車装置(運転者席の横の乗車装置を除く。)に乗車させるとき(道路交通法施行令 第26条の3の2第2項第1号)」
そしてチャイルドシートについては、「運転者席以外の座席の数以上の数の者を乗車させるため乗車させる幼児の数に等しい数の幼児用補助装置のすべてを固定して用いることができない場合において、当該固定して用いることができない幼児用補助装置の数の幼児を乗車させるとき(道路交通法施行令第26条の3の2第3項第2号)」
それぞれ「乗車人員の制限を超えない場合に限る」という補足の一文が入っているとはいえ、やむを得ない理由として義務を免除しているのです。
これはまったく時代に即していない、矛盾した法令ではないでしょうか。私たちユーザーとしては、いくら法令で例外が認められているとはいえ、それを鵜呑みにして実行し、もし事故が起こって命を落としてしまったとしても、その命は戻ってきません。子どもだけでなくペットも大人1名分とカウントし、シートベルトやチャイルドシート、ジュニアシート、ペット用車載キャリーなどをしっかり使用して、命を守る行動を取りたいですね。