この記事をまとめると
■ホンダからN-VANベースのBEV「N-VAN e:」が登場した
■飯田裕子さんが「e: L4」と「e: FUN」に試乗した
■「N-VAN e:」の内外装や使い勝手、走りについて解説する
充電口をフロントに配置する気配り
2050年にカーボンニュートラルを達成するという目標を掲げているホンダから軽商用車バンのN-VANをベースとしたBEV(バッテリーEV、以後EVと略)が登場した。
軽EVバンは大手の配送業社が導入を開始、または準備を進めていて、最近は都市部の街なかや住宅街で郵便局のEVバンのみならずEVオートバイを目と耳(ヒュイーーーンと走る音)で存在認識する機会が増えてきた。停車、配達を頻繁に繰り返す機会の多い環境下、また決められた担当エリアであればある程度距離の予測もつくし、充電のタイミングや必要な時間も計りやすい。カーボンニュートラルを目指すいま、適車適所、商用軽EVバンが果たす役割も大きい。
ホンダは、2023年からヤマト運輸とともにWell to Wheelを含めて実用性の検証を行い、このN-VAN e:を6月に発表、10月から発売を開始した。
ベースとなるのはガソリン車のN-VANだ。センタータンクレイアウトを採用するベース車が、バッテリーを含む電動化システムを床下に納めるのにも功を奏し、軽バンとしての実用スペースはそのままに、助手席側スライドドアを開けると、ピラーレスの間口を含め床から天井まで広々とした空間を確認できる。
バッテリーの搭載量は29.4kWhで、カタログ値が示す一充電走行距離は245km。これは働くEVバンとしてホンダがたくさんの荷物を積んでドライバーがエアコンをしっかり使って走っても、夏でも冬でも100km以上を走れる性能を目指して開発したもので、その結果として航続距離が245kmになったのだそうだ。ちなみに充電時間は普通(6kW)で約4.5時間、急速充電(50kWで80%まで)で約30分。
モデル展開は4タイプだ。積載量の最大化を目的とするひとり乗りの「e: G」。長尺ものも積載できる仕様としながらタンデムのふたり乗りが可能な「e: L2」。これら2台はプロ仕様。一方、一般ユーザーがこの実用スペースを活かしフルフラットのシートアレンジなども可能な「e: L4」と、ベーシックなe:L4に対し、より快適装備が充実した「e: FUN」がある。
今回試乗したのはe: L4とe: FUNだったのでこれらを中心に紹介したい。プロユースの「G」や「L2」よりデザインを含めオシャレな印象があり、そのうえプロドライバーが快適かつ効率よく走行、使用できる機能性や走行性は同様ということで、じつに細やかな配慮がうかがえるモデルたちだった。
デザインコンセプトはe:コンテナ。両眼の間の左右には普通/急速の充電口がある。充電口をフロントにもってきたのは、充電しながらドア開閉ができ、またケーブルが作業をする人の導線を邪魔しないという配慮であり、さらに屈まずに行える高さにあることで操作性にも気を配っている。
ちなみにフロントバンパーと室内センターコンソールには、バンパーリサイクル材がツブツブに混じる塗料を採用している。これまでは目に見えない部分に採用されていたリサイクル材を、今回はあえて加飾せず使っているのだ。これが小麦胚芽入りビスケットのようで何だか優しく、少しもチープに感じられないセンスの良さがうかがえた。
一方、室内ではインパネやドア、メーターなど、目に見えるところがN-VANとは変わっている。プロツール、コンテナをイメージして商用車として働く人、使う人にとってどうやったら使いやすくなるのかを念頭に置いてデザインしたというインテリアは無駄がなく、それでいて使用感の質感がとてもいい。
ドライバーに寄せた思想によりシフト操作をレバー式からアコードやシビックなどに採用されているボタン式にしたことで、センターパネルへのアクセスがしやすくなった。エアコン操作時にスッと手が届きやすく、パワーウインドウのスイッチもセンターに集中させている。運転席だけシートヒーターも標準装備だ。