この記事をまとめると
■ポルシェ911のブレーキ性能は突出して高い
■RRレイアウトのため4輪のブレーキ性能を均等に発揮することが可能となっている
■911のシャシーは前後ブレーキの発する減速Gに適合できるように設計されている
ポルシェ911は高いブレーキ性能で優位性を誇ってきた
911をサーキットで走らせたことがある人なら、誰でもそのブレーキパフォーマンスの高さに感心させられたことだろう。911のブレーキ性能はそれほど突出している。911の特徴といえばリヤエンジンのRRレイアウトだが、レースシーンにおいても911がFRやミッドシップMRのライバル達を尻目に優位性を誇ってきたのは、この突出したブレーキ性能の高さによるところが大きい。
なぜ911はそれほど優れたブレーキ性能を発揮できるのか。その理由はいくつかある。ひとつにはRRレイアウトであること。RRレイアウトでは駆動輪である後輪の上に重量の大きなエンジンが搭載されている。加えてトランスミッション荷重も後輪にかかるので、後輪荷重は相当に大きい。その結果、グリップを発揮しやすく、加速を引き出すトラクション性能にまず優れている。
ではブレーキングではどうか。スタティック(静止)な状態での前後重量配分は前40:後60程度であり、ブレーキング初期には後輪もしっかり荷重がかかっていて初期制動は4輪ともに高い。ハードブレーキングではここから制動Gが高まり、前輪に荷重移動が起こることで前輪が主体的に制動力を司る状態に移行する。
フロントエンジン後輪駆動FRでは前輪に荷重移動が起こると後輪の接地荷重は著しく低下するため、とくにハードブレーキング状況下においてはフロントブレーキのパフォーマンスに依存することになる。しかし、RRの場合は後輪荷重が減少しづらい。荷重移動が最大限にまで高まる間も後輪がきちんと接地を保てているので、後輪ブレーキはその間も仕事をし続ける(つまり制動に寄与する)ことができるのである。
結果、4輪のブレーキがほぼ均等に熱交換器としての機能を果たすことができるので、ブレーキ性能に優れていることになる。