この記事をまとめると
■昭和時代の新車セールスマンは新車を買って乗ることはあまりなかった
■平成中期になると自社で取り扱う新車に乗るようになった
■いまは仕事用で自社のクルマを所有してプライベートは他メーカーを所有する人が多い
セールスマンの愛車事情
日本の新車セールスマンならでは……ということであれば、自分が販売する新車以外に乗ることができないということはその代表例だ。ただ、昭和のころのセールスマンが仕事で使っているクルマといえば、たしかに自分が勤めるブランドで扱っているモデルとなるが、新車を買って乗ることはまずなかった。販売したお客から下取りしたクルマのなかで程度のいいものを選んで乗っていたりしていたのである。
「下取り車に乗っている人のなかには、『あのお客の乗っているクルマがほしい』と、そのお客に新車を売りこんで下取りしたところで自分のものにするという強者ともいえるセールスマンもいました。新車を買って仕事に使うのは入社したての新人セールスマンぐらいだったと聞いています」(事情通)。
あまりに年式の古いクルマに乗っていると、「●年落ち以上のクルマには乗るな」とのお触れが会社から出て、半ば強制的に乗り換えを命じられるというケースもあったと聞いている。
ディーラーによって異なるが、多くは「社員購入割引制度」というものがあるし、新車かどうかにかかわらずに任意保険料の一部負担や、ローンを利用した場合には社員向けの金利が適用されるなど、新車の購入促進策も用意されていた。それでも新車に乗って営業するセールスマンは少かった。
平成中期ぐらいになると、新車販売セールスマンが自分の店舗で取り扱う新車に乗るようになった。お客の自宅で商談をする「訪問販売」から、店頭で商談を進める「店頭商談」がメインになろうとしていた時期だ。そんななか、商談では「まず試乗」みたいな傾向も強まっていったのだが、まだ店舗に十分な試乗車が用意されていなかったことも少なくない。そこで「セールスマンのクルマ=試乗車」という扱いもできることから、「セールスマンは新車に乗るように」とディーラーの方針も変わってきたのである。
試乗車の代わりということもあり「素の状態」、つまり過度なドレスアップやアクセサリーをたくさんつけるといったことは禁止されているとも聞いたことがある。「監督官庁の違法改造の取り締まりも厳しく、ディーラー店舗への抜き打ち監査も行われることがあったそうです。そこで真っ先にチェックされるのが社員のクルマだったらしいのです。純正からインチアップしたタイヤを履いていて、ほんの数ミリでもフェンダーからはみ出していれば指摘されてしまうようなので、車両改造のみならず合法であってもエアロパーツなどの装着すら禁ずるディーラーもあったと聞いています」とは事情通。