ポルシェにとってもファンにとっても「GT」は特別な称号! とはいえややこしすぎる911の「GT」と名の付くモデルを整理してみた (1/2ページ)

この記事をまとめると

ポルシェに多数存在する「GT」を冠するモデルを振り返る

■完全にレースの血統のGT1からロードカーのGT3まで

■現在「GT」モデルを手に入れるならGT3一択だろう

複雑怪奇なポルシェ「GT」モデルについてその起源から迫る!

 ポルシェが911に名付けた車名には、少なからずわかりづらいものがあります。たとえば、GT1というモデルがあると思えば、GT2やらGT3(ケイマンにはGT4)まで出そろっています。続けてGT5になるのかと思うと、こちらはいつまでたっても出てきません。クルマに明るくない素人が聞けば、GTという響きはなにやら勇ましいのが伝わるものの、一体どんなネーミングなのか皆目見当もつかないかと。

 いってしまえばF1などをオーガナイズするFIAのレースカテゴリーそのまんまのネーミングで、ポルシェ以外にもGT1とかGT3を名乗るマシンは数多くあります。とはいえ、ポルシェほどGTなんちゃらを連発しているメーカーもありませんので、そのなんちゃら達をご紹介してみましょう。

GT1

 1990年代初頭までF1と肩を並べるほどの人気を誇ったのがグループCカーによるスポーツカー選手権(SWC)でした。ポルシェは956から962、あるいは下位カテゴリにあたるグループBにその名も「グルッペB(961)」なんてマシンで大活躍をしたものです。が、1992年に開発費の高騰などからグループCレースは消滅し、代わってグループBマシン相当のGTマシンによるレースが企画されました。これが後にBPRグローバルGTシリーズと呼ばれるレースで、トップカテゴリーはGT1クラスと名付けられたのです。

 GTとはいえ、その内容は末期のグループCにほど近く、BPRのレギュレーションによれば、最低25台を生産すれば出場が認められたそうです。が、BPRを主催するひとりが同社の実験部門の元チーフ、ユルゲン・バルトだったにもかかわらず、ポルシェはすぐにはBPRに食いつきませんでした。その理由としてはル・マンに重きをおいていて、BPRのようなレースもどきには食指が動かなかったとか、単にバルトと仲違いしていたとか諸説あるようです。

 ところが、BPRレースにル・マン24時間レースを主催していたACO(フランス西部自動車クラブ)が興味を示し、BPRに参戦していたマシンにも出場機会を与えることになった途端にヴァイザッハは俄然やる気に(笑)。それまでのレギュレーションではポルシェはマクラーレンF1に勝ち目はなく、悔しい思いをしていたところだったのです。

 で、勝利の方程式を知り尽くした男といわれるノルベルト・ジンガーが指揮を執り、1996年ギリギリで公認されたのがポルシェGT1というマシン。993カブリオレのキャビンコンポを用いながら、ミッドシップ化したマシンは、衝突安全基準をちゃっかり993から転用するなど、ヴァイザッハならではの悪知恵というか、熟練の知恵まで発揮されています。

 そして、公認用のロードカーは993仕様のヘッドライトをもったマシンが2台、996仕様の顔になったものが20台作られ、フラットシックスのツインターボから544馬力(レースカーは640馬力程度)を発生し、乾燥車重は1100kg、0-100km/h加速3.7秒、最高速度は308km/hに達したとされています。

 ちなみに、レースシーンではさほど活躍できなかったばかりか、フロントが浮き上がり宙を舞ってしまうなど、ジンガーらしくない不出来に終わっています。


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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