悪燃費も当然と思える性能や魅力がある
ミニバンやSUV、スポーツモデルなど、比較的燃費に不利とされるジャンルのクルマでも昔に比べると劇的に燃費が良くなり、国産車全体の燃費性能はここ10年ほどの間に大きく底上げされている。
トヨタ・アクアや初代のダイハツ・ミライースなどの超低燃費車が登場し、型式認定を受ける自動車にJC08モード燃費値の表示が義務付けされた2011年頃をピークにカタログ燃費競争が過熱した。
最近ではカタログ記載のJC08モード燃費の数字と実燃費との乖離が指摘されることが増えたこともあり、いわゆるカタログ燃費を競う燃費ウォーズはかなり落ち着いた感があるものの、一般的なユーザーにとって燃費はもっとも重要な性能のひとつであることに変わりはない。
二酸化炭素の排出規制問題もあり、燃費・環境性能は自動車メーカーにとって社会的にもさらなる向上が課せられる性能だ。しかしそんななか、いまだにカタログ燃費でさえリッターあたり10kmにも満たない国産のクルマも結構な数が存在する。
本格派のクロカンSUVや超高性能スポーツカー、高級サルーンなどにリッター1ケタ燃費車が見られるが、このご時世にそんな悪燃費でも存続が許されるクルマには、燃費の悪さごときの難点を補って余りある魅力が備わっているものだ。
そこで今回は、リッター1ケタ燃費車をピックアップしながら、それぞれの魅力を探ってみたい。
●クロカンSUV
トヨタ・ランドクルーザー 6.7~6.9km/L
レクサス・LX570 6.5km/L
トヨタ・ランドクルーザープラド 9.0km/L
トヨタ・FJクルーザー 8.0km/L
三菱・パジェロ(ガソリン車) 8.0~8.4km/L
最近は大型のSUVでもハイブリッド化することで燃費の悪さを補い、存外に低燃費なモデルが増えたが、やはり超本格派クロカンSUVのガソリンエンジン仕様となると、貫禄の1ケタ台をキープしている。この5台はいずれも屈強なラダーフレームを基本骨格とした超ヘビーデューティなSUVで、悪路の走破性能は世界的にもトップレベル。世界各国の山岳地帯や砂漠などで文字通り多目的に使われ、燃費がリッター1ケタであることなど大して問題視されることなく重宝されている。
ランドクルーザーとレクサス・LX570は、グレードによっては車重が3トン近くにもなるヘビー級だが燃料タンクは93リットルもあり、航続距離は500km以上で、意外と一般的な大型の乗用車とそれほど変わらない。2.5トンオーバーの車重と屈強なラダーフレームがもたらす乗り味はこのクラスならではのもので、壮絶な雄大さと贅沢感が味わえる。
たとえばセントバーナードなどの、エサ代や排泄物の処理が大変な大型犬を飼うような、本物の金持ちっぽいステイタス性と余裕を感じさせる。数あるリッター1ケタ燃費車の中でも、大量のガソリンをバンバン燃やすことが特に納得できるジャンルといえるだろう。
●ミニバン
トヨタ・アルファード。ヴェルファイア(非ハイブリッド)9.1~9.5km/L
日産・エルグランド(350系) 9.0~9.4km/L
大型ミニバンの人気モデルアルファード&ヴェルファイアもハイブリッドモデルはなんとかリッター2ケタに乗せているが、やはり純粋なガソリンエンジン仕様になると1ケタ台に。エルグランドも3.5リッター車の方は1ケタ燃費となるが、両車とも最上級グレードの室内の広さと内装の豪華さ、乗員を快適にするための至れり尽くせり系の装備の充実ぶりは圧倒的で、まさに動く高級リビング。
クルマ離れした若い女子や子供に対する訴求力も凄まじく高く、多くの人から羨望の眼差しを浴びる快感も含めれば、燃費ごときはリッター9kmもあれば十分以上といえる。高速巡航ならリッターあたり2ケタの実燃費を出すことも難しくはない。
●高性能スポーツ
GT-R 8.6~8.8km/L
フェアレディZ 9.0~9.2km/L
スバル・WRX STI 9.4km/L
国産車のリアルスポーツカーは少なくなったが、現存しているモデルは日本市場のみならず世界的にも評価が高く、ファンも多い名車として愛されている。GT-Rの加速性能は陸上の乗り物としては異次元レベルで、動力性能の高さからすれば低燃費とさえ思える。
WRX STIが搭載するEJ20エンジンはデビューから30年近くにわたり改良に改良を重ねられた長寿ユニットだが、設計思想の古さゆえに8000回転までMTでブチ回せる快感が得られるターボエンジンは世界的にも稀有な存在。8000回転まで回せる308馬力のAWD車としては全然許容できる燃費だ。
●高級サルーン
レスサス・RC350 9.8km/L
レスサス・RC F 8.2km/L
レスサス・GS F 8.2km/L
レスサス・LC500 7.8km/L
レスサス・LS 460系 7.7~8.4km/L
レクサス車はハイブリッド仕様の普及率が高いが、その反面、非ハイブリッド仕様は軒並みリッター1ケタ台。それでもLS以外はすべてハイパフォーマンスなスポーツモデルだし、最近のレクサスのスポーツモデルは官能性の面でも不満がないため、多少の燃費の悪さごときはまったく気にならないだろう。それでいてコンフォート性やラグジュアリー性も高級ブランドにふさわしいハイレベルなものなので、この程度の燃費で十分だ。
●まとめ
このように、現行型の国産車でカタログ燃費が1ケタ台のモデルはいずれもクルマとしての総合的な魅力に溢れており、燃費の悪さはほとんど欠点にならない。このご時世でもリッター1ケタ台の燃費で堂々と売られているクルマはメーカーも絶大な自信を持っているので、むしろ積極的に選ぶべきクルマといえる。本当に面白いクルマに乗りたければ、リッター1ケタ台のクルマを選ぶべし!