この記事をまとめると
■デコトラは多くのファンを持つ
■ワンボックスカーを飾りあげる少数派も存在する
■ワンボックスカーをベースとする理由を解説
ひとつ間違えばめちゃくちゃブサイクに!?
日本に伝わる伝統的な改造車文化であるデコトラ。1975年から1979年にかけて公開された映画『トラック野郎』の大ヒットにより、日本中にトラックを飾るというスタイルが定着した。そんな映画で使用された「一番星号」と「ジョナサン号」は、東映がデコトラショップの協力を得て映画のために製作していた車両であった。
シリーズ化が進むにつれて東映がトラックを製作することになり、電飾が看板用の100V用が使用されるなど本来のデコトラとは異なる仕上がりを見せるようになっていったのだが、ライバル役やエキストラを務めたデコトラたちは、すべて実在するものだった。そう、映画が始まる遥か以前から、日本には飾ったトラックたちが数知れず存在していたのである。
デコトラという呼び名は、プラモデルメーカーであるアオシマ文化教材社が、飾ったトラックのプラモデルを開発する際に生み出したもの。文字どおり、デコレーションされたトラックのことを指す言葉である。そうしてデコトラ文化が広まったのだが、デコトラ文化とはトラックに限定したものではなかった。つまり、不思議な「仲間」が存在するのである。
1970年代、つまりはデコトラ黎明期からワンボックスカーや乗用車などを飾りあげた強者たちが存在したのだ。そんな風潮は現代にも受け継がれており、少数派ではあるもののワンボックスカーをベースにデコレーションを施す人が存在する。ここでは、そんなワンボックスカーを飾る理由と、その特殊な世界観を考察してみたい。
ワンボックスカーを飾るというスタイルが定着したのは、やはり映画『トラック野郎』による影響が大きい。劇中で映し出された飾ったワンボックスカーや乗用車に、多くの人が刺激を受けたのだ。そのような流れで、実用性にも優れたベース車を飾り立てる人たちが増えたのである。広大な室内を有するワンボックスカーは、自動車愛好家にとってとても魅力的な存在。
そんなワンボックスカーであればデコトラのようにカスタムを楽しむことができ、かつ車内を改造することで豪華で快適な空間を手にすることができる。まさに、夢のようなベース車だというわけだ。しかし、トラックのように格好よく飾ることは難しい。そのため、独自のセンスとアイディアをもった人にしか適さないのである。
「まぁ、飾りにくいのひと言やね。1980年代にはいっぱいおったけれど、いまではワンボックスカーを飾る人なんかほとんどいてないし。ワンボックスカーはなかが広いのはいいねんけど、トラックのように飾るのは難しい。ひとつ間違うと、めちゃくちゃブサイクになってしまうからね」。
デコトラ専門誌「トラック魂」の2024年夏号での取材でそう話してくれたのは、現在200系のハイエースを飾って活躍している兵庫県の鈴木義和さん。過去には日産E23キャラバンのバニングカーを築き上げ、その後100系のハイエースをデコトラ仕様で仕上げたという実績をもつ、ワンボックスアートの達人である。そんな鈴木さんをもってしても、ワンボックスを飾ることは難しいというのだ。
しかし、飾りにくいからこそ目立てるというところも事実。他人と同じことをしてもつまらない。そう考えるこだわり志向の人ほど、ワンボックスカーは適したベース車であるといえるかもしれない。
1970年代や1980年代には数多く見られたデコバンたち。そんな個性的で楽しい世界が再び盛り上がることを、期待したい。