ガソリンの自己着火という「夢の技術」で業界騒然となったSKYACTIV-X! どんな技術でなぜ広まらなかったのか? (1/2ページ)

この記事をまとめると

■ガソリンとディーゼルのいいところを組み合わせたエンジンが「SKYACTIV-X」だ

■世界初の技術が多数投入されていたが商品力に欠けていた

■EVが増えていく過程において「SKYACTIV‐X」の未来は不透明だ

「SKYACTIV‐X」は画期的なエンジンだった

 マツダのSKYACTIV(スカイアクティブ)エンジンは、効率を最大にする技術挑戦であり、その理想状態へ近づけたのが、SKYACTIV‐Xだ。

 考え方の原点は、予混合圧縮着火(HCCI)で、これは、ガソリンエンジンでありながらディーゼルエンジンのように点火栓(スパークプラグ)なしで燃焼させる手法である。

 ディーゼルエンジンの燃費がいいとされるのは圧縮比が高いためで、その数値はガソリンエンジンのおおよそ2倍である。それをガソリンエンジンにも適用しようというのが、HCCIだ。そのためには、圧縮比を通常のガソリンエンジンよりはるかに高くし、それによって素早く熱くなった混合気に、自然に火が付くことを前提とする。

 ところが、軽油より揮発性の強いガソリンは、限度を超えた高い圧縮比では、圧縮を終える前に火がついてしまうため、異常燃焼となってかえって馬力が出なくなるのはもとより、エンジンを損傷しかねない。そこで、ほどよい圧縮比にとどめ、スパークプラグにより強制的に火をつけ燃焼させている。

 一方、ガソリンエンジンでも馬力を上げるには圧縮比は高いほうがよく、たとえば高性能車やレース車両のエンジンが市販車に比べ高圧縮比であるのはこのためだ。しかし、ガソリンを使う以上、圧縮比を高めれば異常燃焼の懸念が増大する。そこで、圧縮比を高めても異常燃焼が起きにくいガソリン、すなわちプレミアムガソリン(一般にはハイオクガソリン)、または競技用ガソリンを使うことがこれらのエンジンの条件になる。

 SKYACTIV‐Xは、その前のSKYACTIV‐Gにより通常より高い圧縮比での燃焼をレギュラーガソリンで実現し、効率を高めることでハイブリッド車(HV)に近い燃費を実現するに至った。この実績を基に、次の段階となるHCCIへ向けた開発が行われた。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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