この記事をまとめると
■バンはかつてセダンをベースに作られていたほかファミリカーにもなっていた
■現在はハイエースやキャラバンのほか軽の商用バンなどがその役目を担っている
■トヨタ・プロボックスと日産ADそれぞれの存在意義と販売台数の差について解説する
かつてのバンはファミリーカー的な側面ももっていた
かつての日本車には、セダンをベースに開発されたバンが豊富だった。セダンのルーフを後方へ長く伸ばした商用車で、後席の後ろ側には使いやすい荷室が備わる。そしてバンと同じボディを使って、ワゴンを用意する車種も多かった。
後席よりも荷室面積を広く確保すると4ナンバー登録のバンになり、後席が荷室よりも広ければ、乗用の5ナンバー車として登録される。税額は総じてバンが安い。
昔は所得や物価に対してクルマの価格が割高で、複数の車両をもちにくいため、セダンをベースに開発されたバンをビジネスとファミリーカーの両方に使うユーザーも多かった。1970年代の中盤までは、休日になると、家族でバンに乗ってドライブに出かける光景も頻繁に見かけた。
ところがいまは、いわゆるボンネットバンの需要は大幅に減った。背景には複数の理由があり、まずはクルマの価格が下がり、ビジネスとパーソナルユースを兼用するニーズも減ったことだ。また、軽商用車の機能が向上して荷室も広くなり、商用車全体の半数以上を占めて、小型車のバンはエブリイやハイゼットカーゴに置き換わった。
そして、軽商用バンで荷室が狭い場合は、価格が高いがハイエースを買う。ハイエースは数年間使ったあとでも高値で売却できて資産価値も高い。複数のハイエースを所有する法人が、数台を売却すれば、運転資金に充てることも可能だ。
このように、日本のバンのニーズは、いまでは軽商用バンとハイエース、キャラバンがあれば満たされてしまう。セダンの衰退もあり、いまでは背の低いバンは、形状の似ているワゴンと併せて車種数を大幅に減らした。