熱狂的信者の多いロータリーエンジン! マツダしかクルマに採用していないけど実際「何がいい」? (1/2ページ)

この記事をまとめると

■ロータリーエンジンはマツダにとって象徴的なユニットとしてファンに愛されている

■軽量コンパクトでハイパワーが狙える点がロータリーエンジンのメリットだ

■構造上燃費の悪さは避けてとおれない

ロータリーエンジンってそもそもなに?

 2023年、マツダが発表したプラグインハイブリッドカー「MX-30 Rotary-EV」は大きな喝采をもってマツダファンに迎えられた。その理由は、フロントに発電用エンジンと駆動モーターを搭載する同車だが、発電を担うエンジンに10年以上ぶりに復活したロータリーエンジンを搭載したからだ。

 多くのエンジンは、シリンダー内でピストンが往復運動を行うレシプロエンジンであるが、マツダが独自に開発・進化を進めてきたロータリーエンジンは、「繭の形をしたハウジング内を三角おむすび形状のローターが回転する」というまったく異なる構造となっている。

 こうした構造のエンジンは「ヴァンケルエンジン」と呼ばれている。

 かつて数多の自動車メーカーがその実用化に挑み、いくつかの会社は市販までたどりついたが、いまでも自動車用に製造技術を有しているのはマツダだけだ。いわばロータリーエンジンはマツダを象徴するものであり、マツダの技術力を示す固有名詞と認識されている。

 それゆえ、マツダファンにとってブランドアイデンティティともなっている。だからこそ、発電用エンジンとしてであっても、ロータリーエンジン復活は大いに注目を集め、話題になったのだろう。

 そんなロータリーエンジンは、どんなふうにレシプロエンジンと異なるのだろうか。

 意外かもしれないが、「吸気・圧縮・燃焼(膨張)・排気」という4つの行程(4サイクル)により動作しているという基本においてはレシプロエンジンと同様だ。ただし、レシプロエンジンにおいては、ひとつのピストンが2往復する間に4つのサイクルを実行するが、ロータリーエンジンにおいてはローターの各辺が同時に異なるサイクルを実行するというのが大きな違いとなっている。

 仮にローターの3辺を、時計まわりにA・B・Cと名付けたとしよう。辺Aが吸気行程にあるとき、辺Bは圧縮行程にあり、辺Cは燃焼・膨張行程にある。次の行程を逆から見ると、辺Cが排気行程となったとき、辺Aは圧縮行程となり、辺Bは燃焼・膨張行程となる。

 このように、燃焼サイクルとしては4サイクルであっても、ひとつのローターが複数のピストンのように振る舞うことがロータリーエンジンの特徴だ。

 これは機械的・構造的にコンパクト・高出力というメリットを生み出す。

 レシプロエンジンではクランクシャフト、ロータリーエンジンではエキセントリックシャフトというパーツを通じて、エンジン外部に回転運動を伝達するのだが、それぞれのサイクルにおける行程を整理すると、ロータリーエンジンのメリットが実感できるはずだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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