日産が共同開発した「炎天下でも車内が暑くなりにくい塗装」がスゴイ! すでに同技術のボディカバーやシェードは販売されている (1/2ページ)

この記事をまとめると

日産から「自動車用自己放射冷却塗装の実証実験」の成果が公開された

■メタマテリアル技術を活用した塗装により涼しく快適な車内環境の提供を可能としている

■すでに自動車用自己放射冷却塗装の技術を使った日産の純正アクセサリーが発売されている

日産が共同開発した特別な塗装が車内温度を下げる

 2024年夏、東京都心でも連日35度を超える酷暑日が続いている。屋外駐車のクルマに乗り込む際もまるでサウナ、オーブンのなかにいるような暑さに見舞われる。JAFの実験データによれば、炎天下に駐車したクルマの車内温度は70度に達することもあるというのだから恐ろしい。人だけでなく、内装やETCカードなどにも影響大なのである。

 そんな真夏の2024年8月6日に、日産から「自動車用自己放射冷却塗装の実証実験」が公開されている。「今回開発した塗装は、物体の温度上昇を引き起こす太陽光(近赤外線)を反射するだけでなく、メタマテリアル技術の活用によって熱エネルギーを放射するため、エアコンの使用を抑制しながら、涼しく快適な車内環境の提供が可能」とのことだ。つまり、塗装が車内温度の上昇を抑制してくれる革新的技術なのである。

 日産が実証実験を行っている自動車用自己放射冷却塗装に使用している塗料は、「放射冷却製品の開発を専門とするラディクール社と共同開発したもので、電磁波、振動、音などの性質に対して自然界では通常見られない特性をもつ人工物質メタマテリアルを採用。熱のメタマテリアルとして、晴れた冬の夜間から早朝にかけて起こる放射冷却と同じ現象を人工的に引き起こし、それにより、太陽光を反射するだけでなく、クルマの屋根やフード、ドアなどの塗装面から熱エネルギーを大気圏外に向かって放出することが可能となり、車内の温度上昇を抑制してくれるメカニズム」とされている。

 その効果については、「開発段階において、この塗料を塗装した車両と通常塗料を塗装した車両を比較した場合、外部表面で最大12度、運転席頭部空間では最大5度の温度低下を確認。これにより、炎天下に長時間駐車していた車両への乗り込み時の不快感を軽減し、エアコンの設定温度や風量の最適化により、ガソリン車の燃費や電気自動車(EV)の電費向上を図ることができる」というのだから、屋外駐車の一般車両はもちろんのこと、暑さやエアコン使用によるバッテリーの負担で電費が気になるリーフ、アリア、サクラといった電気自動車(EV)にもうってつけの技術といえるのだ。

 もっとも、すでに建築用途に用いられている自己放射冷却塗装を自動車に転用するのはそう簡単な話ではない。なぜなら、建築用塗装に比べ、自動車用塗装被膜は非常に薄く(建築用塗料は被膜が非常に厚い)、建築用塗料はローラーで塗布することを前提にしているからだ。また、自動車の塗装に必要であるクリアトップコートの使用も想定されていないのである。

 そこで日産は、自己放射冷却塗装を自動車に適応できるよう、エアスプレーでの塗布やクリアトップコートとの親和性、日産の厳格な品質基準など、さまざまな条件への対応に取り組んできたのである。

 そうして2018年からラディクール社との共同開発の可能性を探り、2019年にはフィルムによる冷却効果を確認。2021年11月に世界最先端の放射冷却マテリアル技術を採用したラディクール素材を用いたアイテムを、日産の純正アクセサリーのサンシェードやハーフボディカバーとしていち早く発売している(知ってました?)。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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