この記事をまとめると
■日本の各地で横断歩道橋が次々と撤去されている
■横断歩道橋の多くは1960〜70年代に作られたもので老朽化が進んでいる
■現在は道路の整備、少子高齢化、バリアフリー化などで横断歩道橋の必要性が低くなった
老朽化により撤去が進む横断歩道橋
道の反対側に行きたいときや景色を眺めたいときなど、さまざまな目的で利用される歩道橋。じつはこの歩道橋が続々と撤去されていることをご存じでしょうか。今回は、歩道橋が撤去されている理由を解説します。
歩道橋の多くは1960〜1970年代に作られた
現在も残っている古い歩道橋の多くは、1960〜1970年代に作られました。
1960〜1970年代は、モータリゼーションによって自動車が普及したころです。また、自動車の普及によって交通事故件数も増えました。この深刻化した交通事故の対策として作られたのが歩道橋です。つまり、現在も残っている古い歩道橋の多くが1960年代〜1970年代に作られたものとなります。
もちろん、新しい歩道橋もありますが、老朽化が進んでいる歩道橋のほとんどが作られてから50年以上経過する歩道橋なのです。
さまざまな理由によって撤去が進む歩道橋
半世紀以上にわたり多くの歩行者が通行した歩道橋は、さまざまな理由により撤去が進んでいます。この撤去の理由は主に老朽化です。
そのほかにも、道路の整備、少子高齢化、バリアフリー化などにより、歩道橋を利用する人が減少したことも撤去が進んでいる理由となっています。
では、各自治体ではどのような検討がされ、どのような理由で歩道橋の撤去を決断したのでしょうか。自治体が公表している歩道橋撤去の理由を見てみましょう。
各自治体が公表している歩道橋撤去の理由
【札幌市】
札幌市が現在管理している横断歩道橋は37橋あり、そのほとんどが昭和40年代に建設されています。
横断歩道橋は歩行者と車両を分離する構造となっており、交通安全上重要な役割を果たしてきましたが、近年、周辺環境の変化等の理由により利用者が少なくなり、横断歩道橋としての役割を終えたと考えられるものもあります。
このため、平成24年度に「札幌市横断歩道橋のあり方検討委員会」を開催しました。
検討委員会では、横断歩道橋の利用状況、周辺環境等の資料を基に存続・撤去についての考え方を整理して提言をまとめました。
この提言を受け、札幌市では「横断歩道橋の撤去に関する考え方」をまとめ、撤去候補に該当する横断歩道橋を選定し、地域に対して撤去の提案を、順次行うこととしました。(個別の時期は未定)
【静岡市】
横断歩道橋は、昭和30年代後半から急激なモータリゼーションの進展に伴い課題となった交通事故対策として、全国的に設置が行われてきました。自動車と歩行者を物理的に分離するこの施設は、通学路の重要な部分となるなど、交通安全や自動車交通の円滑化に対し、大きく貢献してきました。
一方、時代を経て、社会情勢の変化から横断歩道橋を取り巻く多様な課題も生じてきています。近年、少子高齢化の進行により、小学校、中学校の統廃合による通学路の変更に伴い横断歩道橋の利用者が減少しているとともに、ユニバーサルな視点から、高齢者にとっては階段のある横断歩道橋はバリアとなっています。
このような背景のもと、今後、横断歩道橋の撤去要望が増加することが予想されることから、横断歩道橋のあり方における県全体の統一した考え方を整理し、撤去・存続の検討を円滑に進めていくための「横断歩道橋の撤去に関する手引き」を策定しました。
通行止め・撤去される前に
歩道橋は、安全に歩行者を横断させるために多く作られましたが、現在では老朽化や利用者の減少などにより、必要性が低いものとなり、撤去が進んでいます。
歩道橋に思い出がある人、歩道橋から眺める景色が好きな人などは、老朽化によって撤去される前に、もう一度歩道橋を渡り、その光景を目に焼き付けておくとよいのではないでしょうか。