この記事をまとめると
■ホンダは2025年までにタイにあるふたつの工場をプランチンブリ工場に統合することを発表
■タイではいま中国メーカーの工場建設が目立ち、現地生産によるBEVの低価格化がさらに進むことが予想されている
■ホンダのタイ工場統合は2040年の完全EV化に向けた既定路線とされている
BYDの攻勢に押されているように見える日本企業の工場統合
ホンダは現在、タイにおいてアユタヤとプランチンブリに生産拠点を設けている。そのタイで、ホンダは2025年までにプランチンブリ工場のみに統合して生産能力を半分にする計画を明らかにした。報道によると、この2工場での生産能力は27万台あるのだが、2023年には14万台までに落ち込んでいることがあるとしていた。
筆者は、統合されるプランチンブリ工場を見学したことがある。開所して間もないこともあり、真新しい設備でホンダ車が生産されていたことをいまも覚えている。
シンガポールのテレビニュースでは、「中国メーカーの進出もあり、今後販売回復が見込めない」との関係者のコメントが紹介されていた。ちなみにこれに先立ちスズキもタイの現地子会社の工場閉鎖を発表している。
一方で、7月上旬に中国のBYDオート(比亜迪汽車)のタイ工場開所のニュースが流れており、前出のシンガポールのニュースでも、ホンダの動きとの対照的な出来事として扱われていた。
タイではBYD以外にもタイ国内で販売を展開している中国メーカーが、現地工場の建設を進めていたり計画している。日本車の販売シェアがいまでも8割前後あり、日系メーカーの多くが現地に生産工場を構えており、タイは「東南アジアのデトロイト」などともいわれることがある。
ある外資系メーカーの関係者からは「弊社が世界で展開している工場のなかで、タイがもっとも品質が高い」と聞いたこともある。日本メーカーが販売や生産で強みを見せるということは、販売現場でも生産現場でも優秀な現地スタッフが育っているともいえるので、後発で進出する際は、中国メーカーが実践しているかは未確認だが、優秀なスタッフをヘッドハンティングすれば新規参入もしやすいともいえるだろう。
実際に過去には、中国国内で日本メーカーと現地企業の合弁会社の生産拠点が集中している華南地域の広東省では、某欧州系メーカーと中国系メーカーの現地合弁企業が新規に工場進出する際には、広東省・広州市地域より賃金の高い「北京(中国の首都)レート」で、日本メーカーから優秀なスタッフを引き抜いたという話を聞いたことがある。