この記事をまとめると
■日本の道路舗装率は令和2年現在で約82.5%に達している
■全国の橋梁やトンネルの老朽化が目立っているがなかなか修繕が追いついていない
■今後のためにも国政の基盤を早急に見直す必要もある
日本の道路はどこもかしこもボロボロ……
国内の道路の舗装率は、令和2年(2022年)現在で約82.5%に達する。このうち、一般国道に限ると99.5%となり、日本の道路がいかに全国的に整備されているかを知ることができる。
一方、老朽化も進んでいる。2010年に中央道で起きた笹子トンネルの天井崩落事故をきっかけに、国土交通省は、5年に一度の頻度で全国の道路の点検を義務付けた。
その結果、老朽化により改修が必要な橋梁が全国で3万カ所以上、トンネルは1000カ所以上あることがわかった。全国の橋梁とトンネルは70万カ所以上あるといわれるので、改修すべき比率はわずか5%以下である。とはいえ、そこを日々クルマや人が通っているのであり、早急な対策が不可欠だ。
手をこまねいているわけではないが、未着手となっている最大の理由は、予算不足にある。大都市への人口集中と、地方の過疎化という両極端な状況により、自治体が管理する道路、橋梁やトンネルの改修に手を付けられずにいる地域がある。
継続的な維持管理であれば、各市町村などが自前でできる。しかし、たとえば橋の架け替えともなると、維持管理の10倍近い予算が見込まれ、とても手が出ないというのが実態だ。
ではどうするか?
手っ取り早いのは、橋やトンネルを通行止めにしたり、撤去したりする。とはいえ、そういった手段を取れば当然ながら移動が制約され、生活に支障を生じたり(隣町へ行けないなど)、遠まわりすることで移動に余計な時間を要したりすることになる。
この問題は、単に道路の課題だけでなく、人口密集と過疎の地域差が背景にある。管轄官庁が点検や回収の指示を出せば解決するほど単純ではない。国のある姿を根本的に見直すときが来ているといえるのではないか。
たとえば道州制のような施策により、地方色を活かしながら発展を視野に入れた独自政策を実施できるようにする改革も再考すべきではないか。県単位での地方創成では、規模や予算に限界がある。あるいは局所だけの繁栄に終わってしまう。
令和2年(2020年)の東京都の地方税と、長崎県のそれを比較すると、長崎県は半分以下だ。もちろん、人口の差があるので、この比較は人口ひとりあたりの指数による。ちなみに大阪府でさえ、東京の65%ほどでしかない。
そうはいっても、道路や橋は同じように老朽化する。県や市町村の力だけで解決するのは難しく、道州制のような規模を持つことで、地域の実情を反映しながら、大きな財政力を活かし、重要課題の解決に取り組まなければ、地域差はさらに拡大の一途をたどり、過疎化はより進み、移動の制限によって住めない地域が増加せざるを得ない。
人は生きるために、「衣食住」が必要といわれるが、現代は、これに「移動」の自由がなければ成り立たない。
単にクルマや道路の課題にとどまらず、日本が人口減少していく先の国のあるべき姿と、国民ひとりひとりが等しく快適に住める住環境を整備するため、国政の基盤を見直すことが差し迫っているのではないか。対処療法では、もはや立ち行かないのである。