「怖い系の人」や「午前3時の女」タクシードライバーが実際に遭遇する作り話のような客

兄貴分と舎弟が繰り広げるドラマのような会話も

タクシーという乗り物は日常生活でほとんど利用しないひともいれば、頻繁に使うひともいる。そして乗ってくるお客はまさに「十人十色」である。

ドライバーの間では時折、ほぼ毎日同じ場所で、同じ時間(とくに深夜や明け方近く)にタクシー待ちしているお客が話題になることがあるそうだ。たとえば「午前3時の女」などと仲間内で呼びあったりすることもあるようで、「俺、この前『午前3時の女』乗せたぜ」などと話が盛り上がることもあるようだ。ここからはタクシードライバーとして短期間ではあるが都内でタクシーを流していた経験者A氏が実際に遭遇したお客について語ってもらった。タクシー

まだドライバーを始めたばかりのある日の昼下がり、日本でも有数の繁華街に近い交差点にて先頭で信号待ちをしていると、交差点の先で、タクシーを待っているふたりの男性が目に入ってきたとのこと(タクシー運転手はプロなので、タクシーを待っているか否かを瞬時に判断できるそうだ)。その風貌や服装から、ひとりは兄貴で、もうひとりは舎弟という表現が似合う、「怖いひと系」のふたり連れであった。

タクシー

いつもなら、信号待ちをしている間に青信号の道路から右折もしくは左折してきたタクシーにそのようなシチュエーションのお客は持っていかれるので、「頼むからほかのタクシーに乗ってくれ」と心のなかで懇願したそうだ。しかしそんな願いもむなしく、別のタクシーは現れずに、信号は青になりそのふたり連れを乗せることとなった。タクシー

目的地は繁華街の真ん中あたりを指定された。緊張して運転していたせいか、目的地へ向かうための裏道に入るのを忘れそうになったそのとき、舎弟風の男性が、「てめえ、この野郎何やってんだ」とキレ始めた。

そこで兄貴格の男性が「まあ落ち着け、運転手さん、道知らねえならちゃんと聞かなきゃいけないぞ」と、少々ドスのきいた低いトーンの声で言ってきたそうだ。テレビドラマのワンシーンのような場面に思わず、「テレビドラマと一緒だ」と内心思ったそうだ。その後は何事もなく目的地に到着。千数百円のメーター料金を小銭で全部払われたのを印象深く覚えているとのこと。タクシー

別のある日の晩、ターミナル駅近くで渋滞にはまっていると、ガラスをたたく音がしたので、ドアを開けると若いサラリーマン風の男性が乗ってきたとのこと。行き先は目と鼻の先のターミナル駅。歩いてもそれほどの距離ではないが、とりあえずタクシーを走らせた。

するとその男性は、どうってこのない世間話だが結構話しかけてきたとのこと。そのお客と話をしている間に目的地に到着。降り際に「なんだか話がしたかったんです」と言って降りていった。どうも仕事で嫌なことがあったようであった。タクシー

お客ひとりひとりは短時間移動での利用がほとんどのタクシー。そのなかで、まさにテレビドラマのようなシーンに遭遇することも結構多いようだ。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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