乗車地もしくは降車地が営業区域内でなければ乗せられない
タクシーについては営業区域というものが法令で定められており、乗車地と降車地がいずれも営業区域以外の場所となると 「区域外営業」となり、タクシー事業者は行政処分の対象となる。空車表示なのにタクシーが停まってくれないという理由の多くはこれに該当すると考えられる。
たとえば東京都内の場合は、「東京23区と武蔵野市及び三鷹市(武三地区)」、「北多摩」、「南多摩」、「西多摩」、「島しょ部」の5つの営業区域が設定されている。
ただ次のようなケースは区域外営業に該当せずにOKとなる。深夜に23区内でお客を乗せ、埼玉県まで向かったとする。目的地で乗客を降ろしたあと、この地点でお客を乗せ、たとえ目的地が目と鼻の先(もちろん埼玉県内)であったとしても、これは「区域外営業」となるが、目的地が東京23区及び武三地区となると、これは降車地が営業区域内なのでOKとなる。つまり乗車地もしくは降車地のいずれかが営業区域内ならば、区域外営業とはならないのである。
たとえば深夜に埼玉県さいたま市から東京の六本木までお客を乗せたとする。深夜の六本木といえば、タクシーでさいたま市へ帰りたいというお客もいるはず。たまたまさいたま市まで帰りたいというお客を六本木で乗せれば、往復で実車(お客を乗せた状態)となるので、タクシー乗務員としては、まさに大穴を当てた気分となるのは間違いない。
営業区域外でお客を降ろし、メーターをあげ(リセット)たら、区域外営業を防ぐ意味もあり、スーパーサインの表示を営業区域内に入るまでは「回送」にするように指導されているとのこと。回送表示していれば、「なぜ空車表示なのに停まってくれない」といった、クレームにもなりかねない要因を排除することができるのだ。
ただタクシー業界事情通によると、「金曜日の夜遅くに東京隣接県から都内のある繁華街までお客を乗せていったタクシーがあったそうです。帰ろうと走り出すと道路わきにはタクシーに乗ろうとするひとがたくさんいたので、区域外営業なのはわかっていたが、そのまましばらく都内で『荒稼ぎ』して帰ってきた」というタクシー乗務員の話を以前聞いたことがあると語ってくれた。