この記事をまとめると
■自動車メーカー各社が月面探査車両の開発を進めている
■月や火星にはさまざまな資源があるとされており有効活用を検討している国や企業が多い
■月面を目指すのは人口の増大や地球環境悪化による人類の生き残りをかけた挑戦ともいえる
自動車メーカーが月を目指す理由とは
トヨタ自動車や日産自動車は、月面探索車両の開発を進めている。ブリヂストンは、その月面探索車両のためのタイヤ開発を行っている。地球上を走るクルマの技術の応用といえるが、なぜ、月面なのか?
世界で初めて有人による月面着陸を果たしたのは米国だ。無人の宇宙船が月面着陸を成功させたのは、ソビエト連邦が先だったが、人が月面に立ったのは米国のアポロ計画での宇宙船アポロ11号による快挙だった。1969年のことで、すでに55年が過ぎている。
そしていま、再び月面への足掛かりをつけようと、米国はもちろん、中国、インド、そして日本も狙いを定めている。なかでも中国は、月面の裏側への着陸に挑み、試料を持ち帰った。中国では、地球と月がかつて同じ惑星だったとする研究があり、それであれば、水や、さまざまな鉱物も採取できるかもしれない。
米国テスラのイーロン・マスクは、火星を目指している。人類の第二の居住先として期待がある。奇想天外な構想に思えるかもしれない。だが、逆にいえば、それほど地球環境は悪化し、もはや戻れない状況にあるとの認識がある。テスラが、電気自動車(EV)や、太陽光発電の普及という環境事業に熱を入れるとともに、スペースXでの宇宙産業へも乗り出し、発射ロケットの再利用を目指して地上へ戻す挑戦に成功している。
環境問題は、単に政治が規制する二酸化炭素排出量を達成すれば済む話ではない。もっと先へ、もっと厳しい対応を目指さなければ、すでに世界でいま起きている、猛暑や、洪水、干ばつといった自然災害を抑えることはできないところまで来ている。
また、20世紀初頭から5倍以上人口が増え、資源の限界を迎えてしまうかもしれない。次の資源を求める一手が、月との連携だ。そしてさらに、月を中継点に、火星などほかの惑星への展開が構想されている。
月面探索車両の研究開発は、当然ながら未舗装路の月面をいかに確実、安全に移動できるか。そして当面は、地球からの遠隔操作でどれだけ的確に移動の目的を達成できるかの試行錯誤に通じる。
その知見を地球に還元すれば、遠隔での管理など含め、自動運転やそれに近い運行管理による新たな交通事業の後ろ盾として活かせるかもしれない。箱庭のような特殊な施設で研究していても、埒は明かない。
今更ながらの月面着陸と、そこでの行動は、単なる夢物語の研究や開発ではなく、危機的な地球環境と人口増大に対する人類の生き残りをかけた挑戦という見方ができる。宇宙開発は、もはや他人ごとではなく、我々の子どもや孫の時代へむけた生きるための挑戦であり、試行錯誤という、重大な使命といえるのではないか。