スポーツカーは小径! バスやトラックは大径! クルマの「ハンドル径」は走りや操作にどう影響する?

この記事をまとめると

■ステアリングの直径はクルマによって結構違う

■ハンドルの径が小さと反応がクイックになり径が大きいと反応が鈍くなる

■かつては保安基準でハンドルの形とサイズが定められていたが現在は明確な基準はない

ステアリングを見れば走りの特性もわかる!?

 ステアリングの直径はクルマによってけっこう違う。乗用車なら、小型車で360~370mm、大型車で380~390mmが一般的。トラックやバスでも450~460mmぐらいが多いようだ。

 レーシングカーはもっと小径で、パワーステアリングがない時代のF1、セナ、プロスト、マンセル時代のマシンだと、セナはグリップが細く、直径の大きいステアリングホイール(太さ28mm、直径280φ)を好み、マンセルはかなり小径で、グリップ部分が太い(太さ38mm、直径248φ)、プロストは太さ28mmで直径275φのステアリングをチョイスしていた。

 現行のF1マシンのステアリングは円形ではないので、直径とは言い難いが、幅はおよそ280mm。

 レーシングカーやスポーツカーほど、ハンドルの径が小さいのは、ハンドル径が小さいと少しの操作量でより大きな舵角がつくため。つまり、それだけ反応がクイックになるということ。したがって、ハンドルサイズによって走りは変わる。

 一方、大型車はハンドルがクイックすぎると、ハンドルを切ったときに車体が大きく傾き、転倒する可能性が出てくる。車体が大きいので、ハンドルの最大切れ角はたくさん必要だが、反応自体は少々鈍いほうが安全なので、あえて大径のハンドルを採用している(船のハンドル=舵輪がとても大きいのも同じ理由だろう。とくに帆船の場合、帆に裏風が入らないように操作しなければならないので、少しずつ舵を切る必要があった。いまの船は、クルマのような小さなハンドル=電気制御のテレグラフハンドルが主流。クルマ的にいえば、SBW=ステア・バイ・ワイヤ)。

 パワーステアリングがない時代は、ハンドルが重いクルマほど、てこの原理を活用したいので、ハンドル径は大きく車体やタイヤが小さく、ハンドルが軽いクルマは小径ハンドルでもよかったわけだが、パワステが標準化された現代では、ハンドルの重さとハンドル径はほとんど関係ない。

 あとは走る場所にもよるだろう。大陸系で広い道を真っ直ぐ長く走る機会が多いクルマなら、ステアリングを大きく切る必要はあまりないので、ハンドル径が大きいほうが運転中の緊張感は少ないだろうし、クネクネ曲がった狭い道やワインデングを走るなら、小径ハンドルのほうが適している。

 ベンツなどは、1980年代まではやたらと大径ハンドルを採用していたが、あれはアウトバーンを重視していたからかもしれない。

 ちなみにかつては、「ハンドルは丸型で直径350mm以上」と保安基準で定められていたが、現在は丸型以外の形状、D型でも問題ないし、350mm以下でも車検はOK。

 ただし、小径ハンドルがスポーツドライビングに向いているといっても限度はあって、小径過ぎるとナーバスで使いにくくなるので、ほどほどに(ミニマムでも、国産スポーツなら340φぐらいが目安。ロータス・エリーゼなどは純正で320φだったが、あれは特殊な例)。

 余談だが、2024年のモナコGPで優勝したフェラーリのシャルル・ルクレールは、モナコのロウズ・ヘアピンで、一瞬ハンドルを持ち替えていた!


藤田竜太 FUJITA RYUTA

モータリングライター

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