この記事をまとめると
■レーシングカーなどにはロールケージが装備されている
■乗用車には基本的に装備されないがその分頑丈に作られている
■重量増加や居住性悪化などのデメリットもある
ロールケージを標準装着しないわけ
市販車をベースにモータースポーツに参戦しようと思うと、いろいろな改造(チューニング)が必要になる。そのなかでも安全性能を高めるパーツとして知られているのが「ロールケージ」だ。オープンカーでサーキット走行をする際や、ラリーのように転落の危険性が高いモータースポーツでは必須アイテムとされている。
具体的には、車両が横転するなどのアクシデント時にキャビンの変形を抑え、乗員を守ってくれる機能が期待されるパーツだ。そのように安全になるのであれば、なぜ量産車にロールケージを標準装備しないのだろうか?
まず知っておくべきなのは、ロールケージがついていないからといって横転時にキャビンを守る機能がゼロではないということだ。たとえオープンカーであってもAピラーを丈夫に設計するなどして横転しても乗員空間を守るような設計にはなっている。モータースポーツでロールケージが必須となるのは、量産車では想定していないような速度で横転する可能性が高くなるからだ。
サーキット走行を考慮したロールケージではサイドバーを追加するなど側面衝突への強度を上げているのはいかにも安心感がある。しかしながら、量産車が側突を無視した設計になっているわけではない。
最近の量産車ではサイドポールテストといって、側面から電柱にぶつかるような事故での安全性も確保するようになっているのは、ご存じのとおりだ。いい過ぎかもしれないが、最新の量産車というのは、ひと昔前のクルマにロールケージをつけたくらいピラー強度を上げるなどしてボディを頑丈に作っているともいえる。
簡単にまとめると、公道走行を考慮したレベルであれば量産状態でも安全性を確保しているが、「モータースポーツでは量産車が想定している以上の速度でのアクシデントが起こりうるためのロールケージが求められている」と捉えることができる。
そうはいっても「ロールケージを装着することで安全性が高まるのであれば量産車にも標準装備すべき」と考えたくなるもの。ただし、実際にロールケージ装着車に乗ればわかるが、ロールケージは快適性をかなりスポイルしてしまうものだ。前述したサイドバーをつけてしまえば乗降性は圧倒的に悪化するし、各部にバーがあることでキャビンは狭くなる。視界を遮ることもあり、そこはマイナスポイントだ。
また、モータースポーツ用ロールケージというのはスチールパイプで作ることが定められている。その重量は20kg以上になることも珍しくない。余計に重くなる以上、これは燃費においてもマイナスだ。
もっとも、スポーツドライビングを突き詰めていきたいのであれば、チューニングの主題としてロールケージを装着することはオススメできる。ここまでクラッシュ時の安全性に注目してきたが、それはロールケージのもつ一面であり、圧倒的なボディ剛性アップパーツとしての役割もある。
建前としては安全パーツだが、モータースポーツやチューニングの本音としては、剛性アップを考えて設計・装着しているというのが、ロールケージの実態といえるかもしれない。