この記事をまとめると
■変速機に内蔵されている大小の歯車がもたらす減速効果をエンジンブレーキという
■燃料を供給されていないエンジンの抵抗を利用する仕組み
■低速ギヤほど強いエンジンブレーキが利く
知らず知らずのうちに自然と使っているエンジンブレーキ
エンジンブレーキとは、変速機に内蔵されている大小の歯車がもたらす減速効果をいう。
自動変速のクルマしか運転したことのない読者はあまり実感がないかもしれない。マニュアルシフトの運転を経験した人なら、1速ギヤ(ローギヤ)で発進するのが常識で、もし、2速や3速、あるいはそれ以上のギヤでクルマを発進させようとすると、エンスト(エンジンが停止)してしまうことを知っているだろう。
つまり、何百馬力といった高性能エンジンであっても、変速機の1速に設定された大小歯車の組み合わせを利用しないと、軽自動車でも1トン近く、登録車になればそれ以上ある重たいクルマを、止まっている状態から動かすことはできないのである。
自転車でも、変速機のある場合は、小さな歯車をペダル側にし、大きな歯車を車輪側として漕ぐと、それほど力を込めなくても楽に走れるはずだ。それが、クルマでの1速発進の効果だ。
しかし、そのままではいくらペダルを漕いでも、あまり速度は上がらない。そこで、ペダル側の歯車を順次大きめにし、車輪側の歯車を小さめという組み合わせに切り替えていくことで、今度は、ペダルをあまり漕がなくても自転車の速度を上げていくことができる。同じことが、クルマの変速機で行われていて、それは、オートマチックと呼ばれる自動変速機も同じだ。
以上は、走り出すときの仕組みと効果である。
では逆に、アクセルを戻してエンジンの出力を抑えたときはどうなるか。変速段数の上の歯車の組み合わせでは、そのまま滑空するようにクルマの速度はあまり落ちてこない。そこで、下の段数の歯車の組み合わせへ切り替えると、グッと速度が落ちてくる。これが、エンジンブレーキと呼ばれる減速効果だ。
発進のときに近いような、下の段の歯車の組み合わせでは、エンジン側が小さな歯車で、車輪側が大きな歯車の関係になる。そして、アクセルを戻してエンジンの出力が落ちると、車輪側の大きな歯車でエンジン側の小さな歯車を強制的にまわし続けようとする力が働く。速度を上げた状態で、車輪は回転し続けようとするからだ。
しかしながら、エンジンはすでに出力を落としているので、簡単にはまわりにくい状態になっている。エンジン内部は、摩擦抵抗などもあり、燃料が供給されなければその抵抗に打ち勝ってまわり続けるのが難しくなる。まわりにくくなったエンジンを、車輪側の大きな歯車がまわし続けようとしても、エンジンの抵抗で車輪の回転を下げようとする力が働く。つまり、エンジンの抵抗によって減速していくことになる。
エンジンブレーキの仕組みは、以上のように、燃料を供給されなかったり、供給量が減って出力が下がったりしたエンジンを、車輪側が無理にまわそうとしてもエンジンの抵抗によって、クルマが速度を下げることである。