マニアが語る「別タン式」ってなに? クルマの高性能ダンパーの「横にあるタンク」の役割とは (1/2ページ)

この記事をまとめると

■レース用や高価な車高調に見られる「別タンク式サスペンション」のメリットを紹介

■単筒式サスより長いストロークを確保できる上にオイルとガスの量も多く入れられる

■別タンク式でないからといって高性能ではないということではない

単筒式サスは十分な全長がないとストローク量を確保できない

 別タンク式サスペンションといえばレース用だったり、高価な車高調に見られる仕組み。そのポイントはストローク量が長く取れることにある。

 スポーツサスペンションに多い単筒式構造。これはシリンダーのなかにオイルが入っていて、そのなかにレンコンのような穴の開いたピストンバルブがついたシャフトが通る。このピストンバルブの穴は薄い鉄板であるシムで蓋をされていて、このシムが広がってオイルが通過するときの抵抗でサスペンションの動きを制限し、動きを減衰していく。

 この単筒式構造の場合、サスペンションが沈んで行くとピストンバルブが下がっていき、シャフトがオイル室にどんどん入ってくる。そうなるとオイル室にはオイル+シャフトの体積が必要になってしまう。どんどんオイル室の体積が大きくなってしまうのだ。

 そこで、オイル室の下にはフリーピストンと呼ばれるゴムの仕切りがあり、その先にガスを入れている。ここには窒素ガスを高圧にして入れてあり、ストロークしてオイル室の堆積が増えた分だけこのガス室が沈む仕組みとなっている。

 さらに、ガス室は高圧になっており、つねにオイルに与圧をしている。それによってオイルの圧力も高まっており沸点も上がって気泡が発生しにくい状況にある。与圧しておかないとサスペンションが素早く動いたときにオイル内で気泡が発生して、あっというまにフレンチドレッシングのようになってしまうのだ。こうなるとオイルがきちんと減衰力を発生できず、サスペンションが抜けたような状態になってしまう。

 単筒式サスはオイル室の先にガス室がある。そうなると問題は、大きく沈み込みたくてもガス室があるので、そこまでストロークが取れないこと。それでも十分にスペースがあるサスペンションの場合はいいが、サスペンション自体の長さが短いとどうしてもストロークが短くなり、路面からタイヤが離れやすくなってしまう。


加茂 新 KAMO ARATA

チューニングジャーナリスト

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