この記事をまとめると
■かつては当たり前の装備だった「ハロゲンライト」のよさを解説
■ライトの色温度がLEDよりも低いので目に優しい
■発熱するので雪に強く交換作業も簡単に行えるというメリットもある
LEDヘッドライトの採用が増え続けている
スマホやパソコンの世界の技術の進化は日進月歩で、いまや半年も情報のキャッチが遅れると、取り返しが付かないくらいの遅れとなってしまうことも珍しくありません。クルマの業界もそれは同じで、15年くらい前までのヘッドライトは「HID(高輝度放電ランプ)」が主流でしたが、いまや軽自動車を含めて多くの車種に「LED」が採用されています。そして昨今では「レーザービーム」なんていう新たな方式のヘッドライトが登場しており、まだ高級車など一部にしか採用例はありませんが、順次下のクラスにも普及していくでしょう。
そうして新型車には以前のものよりも高い性能を備えたものがどんどん採用されていき、古い技術のものは採用されなくなって廃れていくという大きな流れがあります。しかし、古い技術の製品が、すべての面で劣っているかというと、けっしてそうではありません。
ここでは、世代でいうといまのLEDよりも2世代も前となってしまった「ハロゲンランプ」にスポットを当てて、そのよさを掘り起こしてみようと思います。
■自動車のランプの歴史で見ると、ハロゲンは新しいほうかもしれない
はじめに、ザックリと自動車用ヘッドライトの歴史を振り返って見ましょう。
・アセチレンランプ
最初に自動車用ランプとして実用化されたのは「アセチレンランプ」と呼ばれる燃焼型のランプでした。登場は1900年代初頭。原理はアルコールランプと同じで、燃料を燃焼させて発生した光で前を照らすというものです。アルコールよりはるかに激しい光を発するアセチレンを使用してレンズで収束させることで、それなりに実用性の高いヘッドライトだったようです。
・白熱球
アセチレンランプの実用化から10年後の1910年頃には、電気をフィラメントに通して発光させる「白熱球」タイプのランプが登場します。ただ、この当時はまだダイナモ(発電機)が登場していなかったので、電気を溜める蓄電池を積んでその電力を使って照らしていたようです。
・シールドビーム
徐々に自動車にダイナモが搭載されるようになり、電気式のランプが普及してくると、よりシンプルで頑丈な構造の「シールドビーム」が登場してきます。これは自動車のヘッドライトの用途に特化した形状とシンプルな一体型の構造をもっていて、省スペース性にも優れていたことから一気に各国のメーカーに採用例が増えていきました。
登場は1940年ごろですが、それから30年以上にわたって自動車用ヘッドライトのスタンダードとして使われ続けていました。
・ハロゲンランプ
一体型による交換のしやすさなどから広く普及したシールドビームですが、その原理は家庭の白熱電球と同じなので明るさはそこそこというレベルなのに加えて、フィラメントの劣化や振動による断線などで球切れとなるケースがそれなりの頻度で起きてしまうのが宿命でした。
そこで1960年頃に新たに登場したのが「ハロゲンランプ」です。基本構造は白熱電球と同じですが、電球の中に封入したハロゲンのガスの効果でフィラメントの劣化が防げるようになったので、より高い温度で稼働させることができるようになり、明るさが格段に増しました。
普及して性能が安定したころのハロゲンランプは、60Wの消費電力で、白熱灯の100W相当の明るさが出せるという売り文句で性能がアピールされていて、実際に装着した際にも段違いの明るさを見せていたので「あながち嘘ではないな」と評判になり、当時のカー用品店のヘッドライト関連コーナーの棚にはかなりの数の製品が並べられるほど人気を博していました。
その後は2000年頃にHIDランプが登場し、ハロゲンランプは廃れてしまいます