この記事をまとめると
■チューニングの世界では「ライトチューン」と「フルチューン」という言葉がある
■簡単に交換できるパーツで構成するのが「ライトチューン」だ
■「フルチューン」はエンジン本体まで手を入れるレベルの内容を指すことが多い
1980年代から1990年代でブームになったフルチューンとは?
1980年代から1990年代にかけての「メカチューン」から、1990年代以降、2010年あたりまでの「ターボチューン」と、市販車チューニングのブームが何度かありました。
とくに足まわりなどの車体の性能よりもエンジンのパワーが速さの大部分を占めるゼロヨンでは、エンジンのチューニングが極限まで過熱していました。
名だたるショップが製作したデモカーレベルの車両にプライベートチューンの車両が勝負を挑むようなドラマチックな構図があちこちで見られ、それをもとにしたマンガなども多く制作されました。
その熱にほだされた結果、月収20万円そこそこの若者が60回ローンで購入したスポーツカーを有名ショップに持ち込み、全財産をはたいて「フルチューン、お願いします!」というケースもけっして珍しくはなかったという、いまからするとすごい時代でした。
そして、いまではめっきり耳にすることが減ってしまったその「フルチューン」という言葉は、いったいどんな内容だったのでしょう。
当時のチューニングの内容に触れながら、「フルチューン」とそれに満たない「ライトなチューン」のボーダーラインはどこなのかを検証してみましょう。
■まず「チューニング」とはなんぞや?
チューニングに馴染みのない人のために、チューニングの説明から始めていきましょう。
チューニング(=tuning)は、調律、同調という意味の名詞で、「チューニングを行う」という感じで使います。
そう、本来の意味では、エンジンなど機械の調子をベストな状態に整えることをいうんです。それがだんだん変化していって、いまではパワーを上げるための改造を意味するようになりました。
ちなみに、その改造に対して本来のチューニングの意味に近いのは「セッティング」という工程になるでしょうか。
■「ライトチューン」の限界はどのへん?
さて、そのチューニングの方法というのはさまざまです。まず、クルマいじりの初級者が取りかかるエアクリーナーやマフラーの交換もチューニングといえるでしょう。それを細かくいうと「吸排気チューン」というカテゴリーになり、レベルでいうと「ライトチューン」の一種です。クルマによってはその吸排気チューンで2桁馬力アップという例もけっこうあるので、カンタンなわりに効果的なチューニングとして、いまでもその筋では人気があります。
その吸排気チューンに物足りなさを覚えてくると、その次にはECUを書き換えたり、市販のチューニング用ECUに交換したりする、いわゆる「コンピュータチューン」に取りかかる人が多いと思います。
これはNAエンジンでも吸排気の効率アップと合わせて、噴射する燃料の量やタイミングを変更する「燃調」や「点火時期」を現車に合わせ込んでいくことで確実に出力の向上が見込めますし、ターボエンジンであれば、それに加えて「加給圧」を上げてやることで大幅な出力向上が実現できます。
ただ、出力アップが見込めるとはいっても、これはまだ「ライトチューン」の範疇でしょう。まだエンジン本体には手を加えていないからです。
そういう意味では、ターボエンジンでその次の段階になる「タービン交換」もギリギリ「ライトチューン」になるでしょう。
しかし、そこまでいくとインタークーラーや配管、エキマニやサージタンクなど、専用のものをしつらえるケースでは、費用はパーツ代だけで100万円を超えてきます。パワーも内容により数十馬力上乗せされますので、そこで十分満足してしまう人が多いのではないでしょうか。