この記事をまとめると
■世界中でクルマのEV化が進んでいる
■欧州では消防車のEVが活躍している
■オーストリアの消防車メーカーRosenbauer社が開発し販売を行っている
水タンクは最大4000リットルを搭載できる
日本はEVの普及が遅れているといわれている。2023年の乗用車の年間販売台数に占めるEVの割合は2.3%ほどだ。しかし,、これでもここ10年ほどでかなり伸びてきていて、やっとこの数字というのが実情だ。しかもこれは、日産サクラ/三菱ekクラスEVという軽乗用EVが大ヒットしてのこと。
ところが欧米では厳しい環境規制もあって、EVの導入が日本よりも進んでいる。欧州の乗用車市場に占めるEVの割合は14.6%と高い。もっとも、欧州は広いので地域や国によって普及率にはバラ付きがあり、単純に比較はできないが、幅広い車種でEV化が進められている。
そのなかでも注目すべきは消防車だろう。
欧州ではすでに消防車のEVが活躍しているのだ。オーストリアの消防車メーカーRosenbauer(ローゼンバウアー)はRTというEV消防車を開発、販売している。これはボルボトラックスの電動パワートレインを利用し、ボディを作り上げたもので、180kWのモーターを2基搭載した全輪駆動で132kWhのバッテリーを搭載している。さらに、レンジエクステンダーとしてディーゼルエンジンと発電機も搭載しているらしい。
EVなので重くなってしまいそうと思われるが、大型車両の割にバッテリーの搭載量を抑えているので、水タンクは最大4000リットル、消化液も最大400リットル搭載できるそうだ。航続距離は短いだろうが、消防車の管轄範囲はそれほど広くないし、十分な能力でポンプを駆動するのもモーターなので強力な消火作業が期待できる。また、昨年の東京国際消防防災展に輸入元である帝国繊維が、ショーの展示のためだけに輸入している。ただ、海外ではすでに活躍しているそうだが、日本への導入は未定だ。
また、東京国際消防防災展2023には、消防車メーカー大手のMORITA(モリタ)も三菱ふそうのトラックEV、eキャンターをベースに製作した次世代消防ポンプ自動車のコンセプトモデル「MoEVius concept (メビウス コンセプト)を展示していた。こちらはコンセプトモデルなので、そのまま市販されることはないが、近い将来、このようなEV消防車が必要になるという想定で開発されたようだ。モリタが開発した「MDM-ECU」によるePTOシステムにより、リチウムイオンバッテリーからの限られた電力供給するEV専用ポンプe-Fire Pumpによって、高効率な運用を可能としている。さらに、パッケージを工夫することによって、水槽容量も900リットルを確保している。
また、EV救急車はすでに日本でも導入されている。これは、日産が欧州で販売している中型のセミボンネット型バンであるNV400をベースにEVへとコンバージョンして救急車としての装備を組み込まれている。池袋消防署に2021年に配備されているというから、付近の人たちは見かける機会もあるだろう。
ちなみに価格は1台8000万円だそうだ。ほとんど手作りの救急車であり、価格もワンランクほど跳ね上がっているそうだ。