この記事をまとめると
■日本独自の文化として発展してきたデコトラ
■デコトラには「名文句」というものがある
■ワードセンスにオーナーの人間性を垣間見ることができる
歴史と伝統を重んじるデコトラ文化
1970年代に大きなブームとなり、長きにわたって日本独自の文化として発展してきた「デコトラ」。荷物を運ぶためのトラックにきらびやかなデコレーションを施すことが特徴的なデコトラには、絵や電飾とともに、車体に文字を書き入れるというスタイルが旧くから定着してきた。
その内容はさまざまで、ストレートに会社名を記したものや、オリジナルの名文句を綴ったものなどが存在する。目立つためにトラックを飾り立てるデコトラ愛好家たちにとって、文字とはそれほどまでに大きな意味をもつ存在だと捉えられているのだ。
デコトラは日本発祥の文化であるため、メインとなるのはもちろん日本語である。自動車カスタムにあって和風の改造車は比較的珍しいため、その部分もデコトラならではの特徴だといえるだろう。しかし、スタイリッシュな雰囲気を手にすることができる英文字を、トラックのボディ(荷台)に記すというスタイルも1970年代から好まれてきた。
もちろんボディに絵を描くこともデコトラの代表的なカスタムなのだが、文字だけというケースも昭和の時代から定着してきたのである。そのような風潮が令和となった現代でも変わらず受け継がれているという部分にも、歴史と伝統を重んじるデコトラ文化の奥深さを感じ取ることができるといえるだろう。
“夜の電飾”にも力が注がれるデコトラには、マーカーランプとともにアンドンと呼ばれる看板灯が数多く装着される傾向にある。そこに名文句を刻むことでデコトラ野郎たちは他車との差別化を図り、個性を体現するとともに自己主張をしているのだ。
「日本全国渡り鳥」や「台貫(重量検問)無用」、「満載爆走」などデコトラ野郎らしい生き様を綴ったものや「恋に揺れる男と女」や「いのち短し恋せよ乙女」といったロマンチックなもの、さらには「義理人情」などの任侠系や「闇街道地獄花」、「人生裏街道」などという怪しげなもの、「人妻殺し」や「キミ乗る人ボク運ぶ人」などのユニークなものまで存在するアンドン文字には、当然のごとく取り決めなどは存在しない。だからこそそれぞれのオーナーが知恵を振り絞り、自分だけの文字を刻むことに躍起になっていたのだ。
それゆえにアンドン文字には、そのオーナーの人間性が如実に現れているといえるだろう。個性がなによりも重視されてきたデコトラの世界で生きる男たちは、独自の世界観をストレートにアピールできるアンドン文字に、とにかくこだわっているのである。
ド派手な大型パーツや夜間を彩る派手な電飾パーツ、そして箱絵やアンドン文字。それらで飾られたデコトラは、名実ともにオリジナリティ満点の仕上がりを誇る。だからこそ愛好家たちはデコトラ活動に没頭し、愛機を自分だけのデコトラに仕立て上げようと願うのだろう。
街なかでデコトラを見かけた際には派手な装飾や大きなパーツのみに視線を奪われるのではなく、アンドンやボディに刻まれた文字や文章にも着目してほしい。たとえイカつそうに飾られたデコトラであってもコミカルな文字が記されていたり、ロマンチックなフレーズが踊っていたりするもの。そのようなギャップを楽しむことも、デコトラにおける楽しみかたのひとつだ。そんな文字からハンドルを握るオーナーの人間性を推察してみるのも、面白いかもしれない。