この記事をまとめると
■インターネットの普及でどの国のユーザーも十分なクルマの情報を得られるようになった
■国によって人気車種にはかなりの差がある
■中国、アメリカ、イギリス、ロシアを例に、実際び人気車種の違いを見ていく
国が違えば人気車種だって異なる
国際自動車工業連合会(OICA)によれば、2023年に世界で販売された新車総数は9272万台におよぶ。コロナ禍の反動で世界需要はV字回復しており、もうすぐ1億台の大台を超えそうな勢いだ。
そうしたなか、それぞれの国や地域では、ユーザーはどんなふうにクルマ選びをしているのだろうか?
結論をいえば、ネット時代のいま、ユーザーは新車購入前にメーカーやメディアから新車に関する十分な情報を得ている、という点では国や地域で大きな差がないように思う。
また、販売方法についても、基本的にはメーカーが製造したあとに販売店に卸売りし、ユーザーは販売店の店舗で新車購入契約をする手続きでも、大きな差はない。ネット上で契約のかなりの部分を行えるシステムもあるが、それはメーカーの方針であって、販売先の国民性や商習慣の影響は比較的少ない印象がある。
こうした新車販売の基本を踏まえた上で、国や地域でユーザーのクルマ選びに何らかの差があるのだろうか? いくつかの国の事例について考えてみたい。
まずは、世界最大の自動車生産・販売国である中国だ。
中国の新車市場が拡大したのは2000年代に入ってからと歴史が浅い。最初は、アメリカンライフスタイルへの憧れなどから、アメリカで普及している上級セダンが人気となった。そうした初期ユーザーの需要が一巡すると、今度はSUVの人気が上がった。
中国では、良い意味で「見栄」が大切であり、クルマ選びにもそうした視点が多分にあるといわれている。だが、中国でも今後、Z世代が市場の主流になっていくなか、クルマに対してコスパを追求するようになることも考えられる。
次に、アメリカだ。
こちらは、「安全パイ」と「個性」の2極化という感じだろう。「カムリ」「カローラ」「シビック」「アコード」というC/Dセグメントから、2010年代にコンパクトSUV「RAV-4」、「CR-V」へと安全パイがシフト。フルサイズピックアップトラック、フォードFシリーズも安全パイの一種だ。
一方、Z世代とその前のY世代あたりから、クルマのコスパ重視の視点で、クルマを所有しないライドシェア志向も進んでいる。
また、英国は古き良き時代を大切にする風潮は残っているものの、こちらでもZ世代はコスパを気にする傾向がある。
その他、ロシアは2000年代から2010年代にかけて、国産車から品質の高い日系、欧州系へと需要がシフトしたが、その際に販売店のサービスの質を気にする傾向が強かった。ただし、現在は戦時中であり、ロシア経済の状況は大きく変わってしまった。
ロシア、そしてウクライナの人たちが、安心してクルマ選びできる日が一刻も早く来ることを願う。